【地球科学】周期的に生じる巨大な氷山が深層水の生成を減らす
Nature Communications
2015年3月25日
東南極にあるメルツ氷河の突出した氷舌が、過去250年間にわたって一定の時間的間隔でポキッと折れていた可能性のあることを明らかにした論文が、今週掲載される。こうした約70年ごとの周期的な氷舌の分離によって巨大な氷山が生じ、その結果、局所環境の停滞、海氷生産量の減少、深層海洋循環の鈍化が起こり、それによって全球の気候が影響を受けた可能性が、今回の研究結果によって示唆されている。
メルツ氷河の氷舌は、南大洋に向かって数十キロメートル突出しており、その風下側には生産力の大きな海氷環境がある。海氷が形成すると、大量の塩が海洋に放出され、これは高密度の南極底層水の約25%に相当する。南極底層水は、全球的な熱塩循環を駆動している。2010年2月には、巨大な氷山がメルツ氷河にぶつかって氷舌が分離し、その過程で長さ80キロメートルの氷山が形成され、局所的な海氷の形成が阻害された。こうした氷河の分離が単発的な事象なのか、より長期的なレジームの一環なのかは明らかになっていない。
今回、Xavier Crostaたちは、メルツ氷河の下流側の海底で採取した250年間の堆積物コアから得られたプランクトンの化石と化学物質を解析した。こうしたプランクトンの化石と化学物質は、過去の海氷の生産と深層水の形成の変化の指標となる。Crostaたちは、過去2世紀半にわたる海氷の状態と南極底層水の生成が70年周期で変動したことを明らかにして、長期的なレジームが存在しているという見方を示している。
メルツ氷河が局所的に卓越していることを考えると、この70年周期が氷河の分離ダイナミクスによって決まっている可能性が高いが、地域的な大気の変動パターンに加えて周辺の他の氷河から分離した氷山も何らかの役割を果たしている可能性がある。
doi:10.1038/ncomms7642
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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