【気候科学】海洋細菌によって駆動される炭素貯蔵
Nature Communications
2015年4月1日
海洋細菌が海洋での炭素隔離を引き起こす支配的な力となっている可能性を明らかにした研究論文が、今週掲載される。この新知見は、単純な有機分子が構造的に複雑で分解されにくい有機物に転換される過程で海洋細菌が重要な役割を果たしていることを示唆している。
海洋性植物プランクトンは、大気中から二酸化炭素を回収し、光合成と呼吸を介して大量の有機炭素に転換する。こうした有機炭素は溶存有機物(DOM)と総称され、海洋に貯蔵されている。DOMの運命は、どれだけ分解されにくいかにかかっている。分解されやすいDOMは、海洋生態系内で再利用されるが、分解されにくい(難分解性)DOMとそこに含まれる炭素は、数千年にわたって隔離されるのだ。この炭素隔離において細菌が何らかの役割を果たすと考えられているが、細菌により変性したDOMの化学的複雑性とそれが全球炭素循環において果たす役割については十分に解明されていない。
今回、Oliver Lechtenfeldたちは、バイオアッセイ実験と超高分解能の代謝プロファイリングを行って、海洋細菌により変性したDOMの化学的複雑性を解析した。Lechtenfeldたちは、沿岸海水中の微生物と炭素源と無機栄養素を混ぜて29日間培養し、比較的単純な有機分子が海洋細菌によって難分解性の複雑な分子に急速に転換されることを明らかにした。この実験は実験室内で行われたものだが、海洋細菌により変性したDOMの化学組成と構造的複雑性が海水中で一般的に見られるDOMと似ていることが明らかになった。このことは、有機炭素の隔離において海洋細菌が重要な役割を果たしていることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms7711
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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