脳の戦略センターの部位を特定
Nature Neuroscience
2015年4月21日
攻撃や防御の戦略をつかさどる脳領域を同定したとする研究が、今週号に掲載される。将棋(チェスの日本版)の棋士の脳活動をモニターしたこの研究は、ヒトが決定を下す仕組みについての新しい洞察をもたらす可能性がある。
脳における意思決定を探る数々の研究は、異なる成果をもたらしリスクの程度も異なる複数の選択肢をめぐる選択に焦点を当てていた。こうした選択は、それに適した全体戦略に依存して行われるが、そもそもどの戦略を選ぶかの仕組みについては分かっていない。将棋は特に、攻撃志向の戦略と防御志向の戦略とが強く背反するので、それら2つを区別しやすい。
田中啓治ほかの研究者は機能的磁気共鳴画像化法を用い、17名の高段位アマチュア棋士について、将棋のある局面において攻撃を続けるか防御にまわるかのどちらが適しているかを判断する際の脳活動を追跡した。2回目の試行では、棋士にあらかじめ設定した駒の配置と戦略(防御志向または攻撃志向)のどちらに進めるかを選んでもらった。これにより著者たちは、局面の選択に関わるのではなく戦略を特異的に符号化している脳領域を同定できた。
戦略決定が局面選択に先立ってなされることが明らかにされ、このことから、まず最初にある戦略を適用し、それからさまざまな制約の中で特定の行動を選択するという考え方が支持される。攻撃志向戦略と防御志向戦略の値は異なる脳領域で符号化され、前者は後側帯状回皮質(PCC)、後者は吻側前側帯状回皮質(rACC)であった。さらに、背側外側前頭前野(dlPFC)の活性が攻撃志向戦略と防御志向戦略の差異に最も強く相関しており、dlPFCが戦略選択に関わっていることが示唆される。
doi:10.1038/nn.3999
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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