酵母によるオピオイド合成の基礎を築く
Nature Chemical Biology
2015年5月19日
オピオイド合成の初期段階を完結させてグルコースから(S)-レチクリンを生成することができる遺伝子組換え酵母についての報告が、今週のオンライン版に掲載される。先行する研究では、組換え酵母でオピオイド合成の最終段階が完全に行われることが示されている。そうした経路を改良してつなぐための研究を進めれば、最終的には大規模なオピオイド生産の低コスト化が実現するかもしれない。
広く利用されている数多くの薬物は、構造の複雑さゆえに実験室で安価に合成することができないため、植物抽出物からの分離または製造が行われている。遺伝子操作を行った酵母などの微生物を利用してその種の化合物を生産する系は、DNA配列解読法および合成生物学の進歩により、このところ実現に近づきつつある。ベンジルイソキノリンアルカロイド(BIA)は植物に由来する化合物の大きなファミリーであり、モルフィン(モルヒネ)およびコデイン(メチルモルフィン)という化合物はこのファミリーに含まれる。合成経路の初期段階の重要な酵素で、酵母で作用してL-チロシンをL-DOPA(ドーパミンの前駆体)に変換することができるものは発見されていないため、微生物によるBIA生産は困難であった。
上記の問題を解決するため、John Dueberたちは、独自のカラーコード・バイオセンサーを開発した。それによって研究チームは目指す酵素を同定し、変異を加えて生産性を向上させた。酵母、Saccharomyces cerevisiaeの遺伝子操作を行ってこの酵素を産生させることにより、酵母によるグルコースからドーパミンへの変換が初めて実証された。研究チームは、別種生物のDNAを加えてさらに酵母を改変し、酵母が経路のそれ以降の反応を行って最終的に中間体(S)-レチクリンを産生するようにした。その2つの経路をつなぐのに必要なステップはあと1段階である。
この研究に関連したNews & Views記事でPamela Peralta-Yahyaは、「下流のBIA経路酵素が酵母で発現することはすでに示されており、この研究は複雑なBIAのグルコースからの直接生産に道を開くものだ」と述べている。
doi:10.1038/nchembio.1816
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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