Research Press Release

米国西部における今後の電力供給を脅かす諸要因

Nature Climate Change

2015年5月19日

今後の米国西部での電力供給が気候変動によって著しく制約される可能性のあることを示唆する論文が、今週掲載される。今回の研究では、米国西部の発電容量の約半分(46%)を占める発電所での夏季発電容量が、21世紀半ばに流水量、気温と湿度の変化によって最大3%減少すると推定されている。

異常高温や異常乾燥など気候の悪条件は、発電の妨げになることがあり、なかでも石炭などを使う火力発電所は気候変動に最も高い脆弱性を示す。しかし現在、電力事業者の開発計画には気候の影響は組み込まれていない。

今回、Matthew BartosとMikhail Chesterは、3つの二酸化炭素排出シナリオを用いて、西部電力調整委員会管下の14州(カリフォルニア州を含む)における今後の電力信頼性評価を行った。その結果、この地域の現在の発電容量の46%を占める脆弱な発電所では、気候変動によって夏の平均発電容量が1.1~3%減少し、もし10年間の干ばつがあれば、この減少率は7.2~8.8%になる可能性があることが明らかになった。また、カリフォルニア州とコロラド州の河川流域では、気候変動によって平均年の夏の発電容量が2~5.2%減少する可能性があるとされる。今回の研究における予測結果は、10年間の干ばつがあった場合、電力事業者が予備容量を最大で20~25%過大評価している可能性を示唆している。

以上の結果は、従来の火力発電への過度の依存が将来の発電容量の制約となる可能性を示している。今回の研究は、保全戦略の促進、再生可能エネルギーへの投資、新規施設の計画への気候上の制約の組み込みなどによって気候変動に強い電力系統を作り上げるための一層の努力が必要なことを示唆している。

doi:10.1038/nclimate2648

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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