他人の選択が自分の決断に影響する仕組み
Nature Neuroscience
2015年5月19日
自分に似た人が危険を冒すか安全策をとるかの決断をすると、その決断がその選択の主観的価値を増加させて我々の行動に影響を与えるという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この発見は、社会的な影響が意思決定に影響を及ぼす仕組みについての理解を深めるものであり、個人の意思決定を社会的要因を介して改変しようとする試みを導く可能性を秘めているかもしれない。
危険性のある選択肢に関する決断は、特定の結果を生じる確率のような客観的情報と、危険性に対する各人の傾向との両者によって導き出される。危険性の高いあるいは低い選択肢からの各人の選択に他人の決断が影響を及ぼすことは知られているが、決断を下すにあたって他人の決断を各人の好みとどのように組み合わせているのかについては分かっていない。
Pearl Chiuたちは、賭け事課題の際に危険性の高い選択肢(確率は低いが見返りは大きい)と、安全な選択肢(確率は高いが見返りは少ない)とで決断を下す70名の被験者について、他人の選択を観察する場合としないで自分で決断する場合を比較研究した。被験者は、他人の選択を観察すると他人が以前に下したのと同じ選択をする傾向が強かった。他人の選択が被験者自身の危険性に対する好みに沿ったものであるとこの効果はいっそう強く、また危険性をきらう被験者は、他人の下す安全な選択に影響を受けやすいし、その逆も観察できた。別の実験でChiuらは、被験者が見た選択はコンピュータが無作為に生み出したものだと被験者に伝えた場合、危険性を伴う行動は影響を受けないことを発見した。
またChiuたちは機能的磁気共鳴画像化法(fMRI)を用い、選択肢の主観的価値が社会的影響に起因して増加するのは、腹内側前頭前皮質という、選択に関する主観的価値を符号化するとされる領域の神経活動に反映されていることを示した。
doi:10.1038/nn.4022
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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