【光遺伝学】光による哺乳類骨格筋の刺激に初めて成功
Nature Communications
2015年6月3日
哺乳類の骨格筋を光遺伝学的に刺激することに初めて成功したという報告が、今週掲載される。この論文には、光応答性チャネルであるチャネルロドプシン2(ChR2)を発現するように遺伝子操作されたマウスから外科的に摘出した声帯の収縮を光によって制御する方法が記述されている。
光遺伝学的技術を利用すると、遺伝子操作によって光に対する感受性を備えるようになった特定のタイプの細胞(通常はニューロン)を高い精度で刺激できるようになる。この技術は、これまでに二次運動皮質又は末梢性運動ニューロンを介して骨格筋を間接的に刺激するために利用されてきた。骨格筋細胞の直接的な光遺伝学的刺激については、線虫と個々の筋繊維のみにおいて実験的に実証されていた。しかし、これらの実験からは、無傷の骨格筋におけるこの技術の実現可能性に関する手掛かりが得られなかった。骨格筋自体を収縮させるための力を生み出すには、複数の筋繊維を一度に刺激する必要があるが、それを実現するために十分な光が筋肉を透過するかどうかが明らかになっていなかったからだ。
今回、Philipp Sasseたちは、ChR2を発現するマウスを遺伝子操作によって作製し、外科的に摘出したマウスの喉頭筋に光パルスをわずか2ミリ秒間照射して刺激することで、筋肉の収縮を引き起こせることを明らかにした。また、光パルスの照射時間と照射強度を調節することで、筋肉に加わる力を微調整できることも明らかになった。
Sasseたちは、筋肉を直接光遺伝学的に刺激する方法が、電気パルスによる感覚神経の活性化と近傍の筋肉の不必要な刺激による不快感を克服できるため、電気刺激より優れていると考えている。また、Sasseたちは、マウスとヒトの喉頭に類似点があるため、神経刺激を使えない喉頭麻痺患者に光遺伝学的な刺激法を将来的に適用できるようになると考えている。ただし、それが正しいことを明らかにするには、さらなる検証をかなりの程度続ける必要がある。
doi:10.1038/ncomms8153
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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