【惑星科学】観測光の波長によって金星の大きさが変わる
Nature Communications
2015年6月24日
金星の大きさの観測結果が観測に用いる光の波長によって変わるという報告が、今週掲載される。今回の研究は、2012年に金星が太陽の前面を通過した金星の日面通過(トランジット)の際に行われたもので、極紫外領域とX線領域を用いた金星の惑星半径(惑星自体とその大気圏を合わせた半径)の測定値が可視領域を用いた測定値よりも70~100キロメートル長いことが明らかになった。
金星が太陽の前面を通過することはめったになく、100年以上の長い空白の後、21世紀に入ってわずか8年の間隔で日面通過の対が起こった。今回、Fabio Realeたちは、一番最近の2012年の金星の日面通過において、その背後にある太陽の光を用い、可視領域からX線領域まで波長を徐々に短くして金星の半径を明確に測定した。その結果、その半径が実際には標準サイズより最大100キロメートル長くなることが判明した。この新知見は、金星の上層大気の組成、そして、現在金星を周回中の宇宙探査機に金星の大気によって生じる抵抗に重要な意味を持っている。今回の研究では、金星の上層大気中の高密度のイオン層の高度も示された。この点が判明したことは、宇宙船による金星接近通過や金星大気突入探査機にとっての最低高度を計画する上で重要だ。今回の成果は、太陽系外惑星の測定に有用となる可能性もある。今のところ多波長観測にはわずかな実現可能性しかないが、将来的には地球上と宇宙空間からの観測施設での多波長観測の可能性があることは確かだ。
doi:10.1038/ncomms8563
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