【気候科学】将来の太陽極小期に地域的な気候寒冷化が起こる可能性
Nature Communications
2015年6月24日
将来太陽活動が大きく低下すると、北ユーラシアと米国東部の冬の気温が影響を受ける可能性のあることを明らかにした研究についての報告が、今週掲載される。太陽から放射される紫外線が地球に到達する量は太陽活動によって決まるが、太陽活動は時間の経過に伴って変動する。
太陽活動は、最近まで比較的活発だった(太陽極大期)。しかし、過去数年間の太陽活動は平均レベルを下回っており、この太陽極大期が終わりに近づいている可能性が示唆されている。太陽極小期には英国とヨーロッパが厳冬になることが明らかになっており、マウンダー極小期(1645~1715年)にはテムズ川に霜がおりるのが普通だった。統計的予報によれば、太陽活動が今後40年間にマウンダー極小期のような活動レベルに戻る確率が15~20%とされ、全球の気温に対する影響は非常に小さいものの、地域的な影響は大きくなるとされる。
今回、Sarah Inesonたちは、マウンダー極小期のような極小期が再来するというシナリオにおける地域的影響の可能性を調べるため、今後起こり得る紫外線放射量の減少幅に対応した2つの実験を実施した。その結果、北ユーラシアと米国東部の冬の気温が最大摂氏0.75度低下する可能性のあることが明らかになった。ただし、この程度の寒冷化では気候変動に対抗できない。また、このモデルの結果からは、冬の降水域が南方のヨーロッパ南部に移動し、ヨーロッパ北部と米国南東部において冬日が増えることも示唆されている。こうした変化は多めの見積りと考えるべきだが、今後、新たな気候強制力シナリオを作成する場合には、温室効果ガスとともに太陽活動の変化を考慮に入れるべきことが、今回の研究結果によって示唆されている。
doi:10.1038/ncomms8535
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