【食餌】母親マウスの食餌が仔を喘息から守る?
Nature Communications
2015年6月24日
妊娠中のマウスが高繊維食を摂取すると仔マウスが喘息にならずに成長する確率が高まるという機構についての報告が、今週掲載される。今回の研究は、雌マウスの食餌の繊維代謝産物とその仔の特定のアレルギー性免疫応答のエピジェネティックな抑制との関係を明らかにしている。
近年の喘息の流行は、食物繊維が含まれていない欧米式の食事の摂取量の増加と相関しているとされ、高繊維食の摂取によってアレルギー応答を防げることがマウスを使った実験で明らかになっている。ただし、高繊維食のメリットの持続期間と食物繊維の摂取が最も有用な時期については解明が進んでいない。
今回、Charles Mackayたちは、マウスを使った実験で、さまざまな繊維分が設定された食餌を妊娠中のマウスに与え、その仔が成体になった時、喘息を誘発するアレルゲンを投与した。この実験で、妊娠中のマウスの子宮内で高繊維食にさらされたマウスは、成体になると喘息の発症に抵抗性を示すことが明らかになった。Mackayたちは、その原因は、特定の腸内細菌による食物繊維の消化によって代謝産物が生成されて血流中に吸収されることであり、この代謝産物が炎症反応とアレルギー反応を抑制すると考えている。また、この代謝産物は、マウスの糞便に対してエピジェネティックな作用を及ぼし、ヒト喘息とアレルギー性気道疾患(ヒト喘息のマウスモデル)の両方と関連する特定の遺伝子を抑制する。
さらにMackayたちは、妊娠中の女性が高繊維食を摂取すると同じ代謝産物が生成され、これらの代謝産物が、生後1年間に呼吸器の愁訴で3回以上医師の診察を必要とした乳児の数が有意に減少したことと関連していることを明らかにした。
doi:10.1038/ncomms8320
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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