【進化】側方視をしやすくしているヒトの頭蓋骨の形態
Scientific Reports
2015年6月25日
ヒトの眼窩(眼球孔)の構造は、他の類人猿と比べて独特で、周辺視野を広げるように進化した可能性のあることを示した論文が、今週掲載される。
今回、Eric Denionたちは、ヒトの頭蓋骨(100点)と類人猿の頭蓋骨(120点)の眼窩を比較し、ヒトとテナガザルの眼窩が、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンの眼窩と比べて、convergence(眼窩の入口面がどれくらい前方を向いているかという概念)が有意に低いことを発見した。また、ヒトの眼窩は横長で、横幅と高さの比率がどの類人猿より大きいことも分かった。ヒトは、これらの特徴によって他の類人猿より側方視ができるようになっていると考えられている。
Denionたちは、ヒトの頭蓋骨において、眼窩の外縁(外側眼窩縁、LOM)が他の類人猿より後方に位置していることを報告している。一方、ヒトの眼球は他の類人猿よりも前方に位置しており、この2つの構造が組み合わさると、視野を遮るものが少なくなり、眼で周辺環境を見渡す能力が高まる。この特徴は、現生人類に顔の特徴の選択(例えば、突き出た鼻の喪失)が起こったときの副産物として進化したとDenionたちは考えている。また、Denionたちは、後方に位置するLOMの進化が、ヒトが森林地帯から外へ移動したことによって生じた可能性があるという見方を示している。森林地帯にはヒト以外の霊長類が生息し続けており、これらの類人猿のLOMは比較的前方に位置することで、木の枝による外傷から眼球を保護している可能性がある。さらにDenionたちは、ヒトの眼球が飛び出していることには、紫外線関連の眼疾患(例えば、翼状片、白内障)と広い視野とのトレードオフがあると考えている。
doi:10.1038/srep11528
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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