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dsRNAは干渉もするが、情報も伝える
Nature Reviews Genetics
2003年8月1日
Yao et al.の研究は、候補遺伝子解析の極めて貴重な一例だ。Yaoたちは、破壊される前の大核(旧大核)の情報が新しく作り出される大核(新大核)に伝えられるプロセスこそが、この謎を解くカギだと考えた。ここで有力候補とされたのがRNAだった。テトラヒメナが接合すると、小核ゲノムの塩基配列が2本のDNA鎖から転写され、その塩基配列の一部が新大核を作る際に欠失されることから、Yao et al.の研究では、in vitro i >で、通常は欠失されない遺伝子座を転写し、その結果合成されたdsRNAをテトラヒメナに注入した。接合後の結果は、はっきりとしていた。その次の世代以降のテトラヒメナの大核には、これらの遺伝子座が見られなくなったのだ。これは、このプロセスにdsRNAが関与していることの直接証拠となった。
ところでテトラヒメナは、ただ単に自分自身のDNAを効率よく欠失させ、複製するだけではない。RNAの関与する類似のメカニズムによって外来のDNAも除去しているかもしれないのだ。Yao et al.の研究では、大腸菌の遺伝子をテトラヒメナの染色体に挿入したところ、通常は欠失される塩基配列部分に挿入されたかどうかにかかわらず、大腸菌の遺伝子は除去されていた。大腸菌の遺伝子が酵母菌に導入された場合には、大腸菌遺伝子の塩基配列は何らの調節も受けずに転写されることが知られている。もしテトラヒメナでも同じことが起きるのであれば、ひとたび転写が起これば、大腸菌の遺伝子はテトラヒメナのゲノム監視メカニズムによって検出されることになる。
ここに次の大問題がある。このような遺伝子欠失が起こる根本メカニズムが解明されていないのだ。Yaoたちは、自分たちの実験データとこれまでの観察結果をもとにして、分裂酵母やシロイヌナズナにおけるヘテロクロマチンの生成や植物におけるDNAのメチル化の際にRNAが関与するような方法で、dsRNAが欠失されるDNA領域に目印をつける、という考え方を示している。そしてこの考え方を一歩進めて、RISCのような複合体が遺伝子欠失に関与している可能性があるとも考えているのだ。ただし現在のところは、非特異的エンドヌクレアーゼあるいはリコンビナーゼを原因とする学説も否定されてはいない。
doi:10.1038/fake470
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