Abstract

液体とガラスに隠れた、重要な構造的特徴を明らかにする

Nature Reviews Physics

2019年5月1日

Revealing key structural features hidden in liquids and glasses

液体とガラスに隠れた、重要な構造的特徴を明らかにする
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固体物理学の大きな成功は、逆格子(波数ベクトル)空間における結晶構造のキャラクタリゼーションに負うところが大きい。フーリエ空間における構造キャラクタリゼーションが有効なのは、並進対称性と回転対称性の破れのおかげである。しかし、結晶と異なり、液体や非晶質固体は、巨視的スケールで連続的な並進対称性と回転対称性を持つため、フーリエ空間での解析はそれほど有効ではない。最近、いくつかの研究により、液体やガラスにおいても、並進対称性や回転対称性が局所的には破れていることが示された。今回我々は、一見無秩序に見える液体やガラスの局所的な構造的特徴を、実空間でキャラクタリゼーションするのに有効な数学的手法について概説する。我々は、液体やガラスの局所的秩序化を、エネルギー駆動型とエントロピー駆動型の2種類に分けて考える。エネルギー駆動型の秩序化は、対称性を選択するような方向性結合によってエネルギー的に好まれ形成され、水、シリコン、ゲルマニウム、シリカなどの水型の液体において共通に観察される、異常な挙動の原因となる。一方、エントロピー駆動型の秩序化は、エントロピー的に好まれ形成され、剛体球的なガラス形成液体に見られる不均一な遅いダイナミクスとの関連性がある。また、我々は、そうした局所的秩序化と結晶構造の関係、さらには、それがガラス形成能に及ぼす影響についても論じる。

Hajime Tanaka, Hua Tong, Rui Shi and John Russo

Corresponding Authors

田中 肇
東京大学 生産技術研究所 基礎系部門 ソフトマスター物理学

Hua Tong
東京大学 博士研究員

Rui Shi
東京大学 特任研究員

John Russo
特任助教University of Bristol

doi:10.1038/s42254-019-0053-3

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