Highlight
損傷したミトコンドリアが悪い
Nature Reviews Genetics
2005年9月1日
mtDNA突然変異誘発表現型と老化を結びつけるメカニズムを詳しく調べるために、Kujothたちは、マウスのmtDNAポリメラーゼ遺伝子Polgの保存されたエキソヌクレアーゼドメインで遺伝子置換を行い、その校正能力を阻害した。そして約1キロベースのmtDNAの配列解析を行ったところ、研究対象の組織のほとんどについて、変異遺伝子をもつマウスにおける変異の頻度が対照群の約3〜8倍となっていることが判明した。幼若期には、変異遺伝子がホモ接合したマウスと同時に生まれた野生型マウスを識別できなかったが、生後約9カ月になると早期老化表現型が外見上明白になった。この表現型は、脱毛、白髪化、短い寿命(対照群850日超、変異型460日)という特徴があった。このほかにも加齢に関連する表現型としては、胸腺退縮、精巣萎縮、骨量の減少、腸陰窩の減少、赤血球の漸減と体重減少があった。
mtDNAの突然変異があると、どのようにして老化が早まるのだろうか。まず、Kujothたちは、活性酸素種(ROS)の産生と細胞増殖における欠陥という、すぐ思いつく2つのメカニズムを調べた。しかし解析の結果、老化表現型の原因ではないという結論に達した。ところが、Polgの変異したマウスにおける細胞死を調べたところ、カスパーゼ-3の切断とDNAの断片化というアポトーシスの2つのマーカーが研究対象組織のほとんどに蓄積していることが見つかった。骨格筋と脳には差異が見られず、有糸分裂の終了した組織の方が、mtDNAの突然変異が関与するアポトーシスの誘導に対する抵抗力が強い可能性が示唆されている。これに対して、高齢のマウスの筋肉では、カスパーゼ-3の活性化が観察されており、筋肉量が減少していることが示されている。
Kujothたちは、重大かつ代替性のない細胞がアポトーシスによって失われることが、mtDNA 突然変異の蓄積に伴う組織障害の中心的なメカニズムであると考えている。この考え方は、老化を遅らせる介入行為であるカロリー制限によってmtDNA突然変異の蓄積が遅れ、ミトコンドリアの関与するアポトーシスが減ることを示す証拠によっても裏づけられている。
doi:10.1038/fake496
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