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みんなで協力すれば不可能なことはない
Nature Reviews Genetics
2005年11月1日
Youngたちは、クロマチン免疫沈降法とDNAマイクロアレイを組み合わせて、17,917種類の注釈付きヒト遺伝子のプロモーター付近の領域を調べた。その結果、OCT4、SOX2、NANOGが、それぞれ623、1,271、1,687種類の遺伝子のプロモーター付近に結合していることが判明した。特に意外だったのは、これらの遺伝子のうち少なくとも353種類が、3種類の転写因子すべてと結合していたことだ。このことは、これらの転写因子の機能に相当の協調性があることを示唆している。
このように協調的に調節される遺伝子のうち、約半数は、OCT4、SOX2、NANOGによって活性化され、残りは抑制されていた。活性化した遺伝子には、TGFB、WNTシグナル伝達経路の構成要素が含まれていた。この経路は、いずれも多分化能の維持にかかわっている。抑制された遺伝子の中には、分化にとって重要な数多くの転写因子が含まれている。
Youngたちは、酵母について考案されていたアルゴリズムを使って、ヒトES細胞に2つのタイプの調節回路があることを確認した。第1のタイプの回路は、1つの調節因子が別の調節因子を調節し、次にこれら2つの調節因子が標的遺伝子を調節するフィードフォワードループである。この2つの制御段階で、いずれも正の調節が行われていれば、シグナル入力に一過性の変動が生じても安定性が維持されるが、いずれかの制御段階で負の調節が行われれば、状態の変化に対する応答が急激に変化することができる。
第2のタイプの回路は、Youngたちが「自己調節ループ(autoregulatory loop)」と呼んでいるもので、OCT4、SOX2とNANOGが自らの発現を調節している。これによって、遺伝子発現が安定し、環境からの刺激に素早く応答できるようになっている。
この研究方法を用いることで、他の転写因子やクロマチン調節因子によって調節されている回路についても解明が進むだろう。この回路についての検証を行う際には、ES細胞の培養技術や遺伝子操作技術の進歩が役に立つだろう。ES細胞の調節回路を十分に解明できれば、幹細胞をさまざまな種類の細胞に分化させ、場合によっては分化細胞を多分化能のある細胞の状態に戻すことすらできるようになるかもしれない。
doi:10.1038/fake498
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