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しっかりと閉じた目

Nature Reviews Neuroscience

2003年2月1日

生まれたての哺乳動物で目が開いていなくても、その目は従来考えられていた以上に光に敏感な場合がある可能性が、Neuron誌に掲載されたAkerman et al.の研究論文に示されている。 生まれたての哺乳動物が開眼する前に非常に明るい光やコントラストの高い刺激を与えると、視覚系で何らかの応答が見られることは既に知られている。例えばフェレットの目は、生後およそ32日(P32)経たなければ開かないが、早ければP19で光に対する応答を見せ始める。これに対して、開いていない目に対する自然光レベルの光の影響については、これまで研究されていなかった。 Akerman et al.の論文によれば、若齢のフェレット(P20〜P26)に対し、その通常の飼育環境で経験する視覚刺激をシミュレートする映像を見せて、外側膝状核(LGN)におけるニューロンの活動を測定した。外側膝状核は、網膜からの視覚情報を視覚野へ中継する機能を果たしている。測定結果は意外なものだった。すなわち外側膝状核のニューロンの活動パターンは、ランダムな自発的活動ではなく、光刺激に対する個別的な応答と整合性があったのだった。このことは、外側膝状核に投射する網膜神経節細胞(RGC)が意味のある情報を伝達していたことを示している。 Akerman et al.の研究は、視覚系の発達時における活動依存的な過程を別の観点から見直している。Akermanたちは、2つのタイプの網膜神経節細胞から外側膝状核への投射の発達を調べた。2つのタイプとは、光強度の上昇に応答する「On」細胞と光強度の低下に応答する「Off」細胞のことだ。通常、出生後初期の発達段階においては、「On」外側膝状核求心性神経と「Off」外側膝状核求心性神経とは分離しており、個々の外側膝状核ニューロンは、いずれかのタイプの細胞のみから入力を受ける。これに対してP16から暗黒飼育されたフェレットの場合には、光の輝度の増減にともに応答する外側膝状核ニューロンがいくつか見つかった。このことは、通常、「On」外側膝状核求心性神経と「Off」外側膝状核求心性神経とが分離する際に光が必要とされることを暗示している。 出生後初期段階における視覚系の形成に視覚経験がどのように関与しているかについては論争になっている。Akerman et al.の研究論文は、この論争に油を注ぐものとなる可能が高い。ニューロンの活動が関与している点については、ほとんど疑いの余地はない。これに対して、目が開く前に観察された現象は、神経系に対する光刺激ではなく、自発的活動によって引き起こされると従来は考えられてきた。今回のAkermanたちの観察結果は、これまで自発的活動が原因とされてきた効果の一部が実際には視覚経験が原因となっている可能性を示している。

doi:10.1038/fake512

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