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「あなたが言っていることがわかる」とは?

Nature Reviews Neuroscience

2003年12月1日

脳はどのようにして「peaceful(穏やかな)」とか「diurnal(昼間の)」といった概念を処理するのだろうか? これまで概念には命題性があると考えられてきたため、概念の神経表現を理解することは難しかった。これに対して、概念は運動過程と感覚過程に基盤があることが複数の研究者によって主張され、概念の神経処理によって特定の運動野と感覚野が活性化されると予測された。そして最近発表されたJamesとGauthierの論文では、聴覚や行動と関連した概念的特徴を具体的な視覚刺激に結びつけておくと、聴覚に関連した感覚刺激と行動に関連した感覚刺激にそれぞれ応答する脳領域の活性化につながることが示され、前述の予測が裏づけられたのだ。 JamesとGauthierは、被験者を訓練して、所定の種類の知識に関する3つの単語と特定の視覚刺激とを結びつけられるようにさせた。この視覚刺激の設計にあたっては、その純粋な静的外観から特定の単語と結びつかないようにした。そして、それぞれの視覚刺激は、例えば、聴覚的特徴をもつ単語群(squeals、howls、sings)や行動と関連した特徴をもつ単語群(digs、climbs、walks)と結びつけられた。その結果、聴覚的特徴の場合に上側頭回が活性化し、行動と関連した特徴の場合に後上側頭溝が活性化したため、これらの関連性を明示的に想起する必要のない視覚課題において上述の脳領域が活性化するかどうかが重要な問題となった。JamesとGauthierは、確かにこの領域が活性化することを発見し、概念が知覚に基盤を置くという考え方が裏づけられた。さらにJamesとGauthierの実験データは、意味に関する知識が、従来主張されていたようなグローバルでアモーダルな脳システムではなく、感覚特異的な脳システムや運動特異的な脳システムに保存されている可能性を示している。

doi:10.1038/fake520

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