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Nature Reviews Molecular Cell Biology
2003年6月1日
SungらのグループとFabreのグループはそれぞれ、大腸菌、あるいはバキュロウイルスに感染した細胞に由来するSrs2を精製した。精製されたSrs2は、1本鎖(ss)DNA依存性のATPアーゼ活性とDNAヘリカーゼ活性を持つことをどちらのグループも確認した。アフィニティクロマトグラフィと酵母を使ったツーハイブリッドアッセイにより、SungらはSrs2のカルボキシル末端がRad51リコンビナーゼと結合することを明らかにした。
どちらのグループも、Rad51とssDNA結合因子であるRPAを、ssDNAとATPの存在下でインキュベートするin vitroでの組換えアッセイを行った。これにより、Rad51-ssDNAヌクレオフィラメント(シナプス前フィラメントとも呼ばれる)が形成されるが、ここにさらにdsDNAを加えると、相同対形成が起こって連結分子が形成される。そして、次にDNA鎖交換反応によって切れ目(ニック)のある環状二重鎖DNAが作られる。ヌクレオフィラメントが形成された後に触媒量のSrs2を加えると、相同対形成とDNA鎖交換が著しく抑制された。しかし、組換えの抑制は、Srs2によるDNAの巻き戻しが原因ではない。これは、2つのグループがそれぞれ別の方法を使って明らかにしている。
だとすると、Srs2はどのようにして組換えを抑制しているのだろうか。2つのグループは、ssDNA上に形成されたRad51のヌクレオフィラメントをSrs2が破壊するのを、電子顕微鏡を使って観察した。さらに、Rad51のヌクレオフィラメント形成時に補因子として働くRPAは、Srs2による破壊を促進した。これは、おそらくヌクレオフィラメントの再組み立てを阻害することによっていると考えられる。
また、Sungらは、Srs2がヌクレオフィラメントを破壊することによりRad51の機能を阻害するかどうかを生化学的な方法を使って調べた。ヌクレオフィラメントから遊離したRad51は、構造が弛緩した二重鎖DNA(in vitroでRad51が効率よく結合する)にトラップされることがわかった。一方、Rad51が結合した二重鎖DNAをトポイソメラーゼIで処理すると、スーパーコイルDNAの1種でU型と呼ばれるものが得られる。実際、このトポイソメラーゼIを使った実験で、SungらはヌクレオフィラメントにSrs2を加えるとU型が生じることを見出した。また、Srs2によって起こるRad51のssDNAからの解離を、磁性ビーズに結合した二重鎖DNA上で行わせた。このSrs2が関わるRad51の二重鎖DNAへの移動は電子顕微鏡で観察することができた。
そこで、著者らは、Srs2は、Rad51ヌクレオフィラメントを破壊することで、組換え中間体、特にDNA複製の間に生じる中間体が不適切なタイミングで形成されるのを阻害していると結論している。BLM やWRNのようなDNAヘリカーゼに生じた変異は、それぞれブルーム症候群やウェルナー症候群の原因となるが、組換え異常にも関連している。2つの論文の著者らは、Srs2が行っている組換え制御機構から、このようなゲノムの不安定性が増すという異常の分子的基盤を考察できるだろうと考えている。
doi:10.1038/fake557
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