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姉妹が仲良くくっついて

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2004年3月1日

細胞は減数分裂の第1分裂にあたって、接着という厄介な問題に直面する。対合していた相同な染色体を引き離しながら、それぞれの姉妹染色分体どうしの接着は保ちたいのだ。Natureには渡辺嘉典たちから、ScienceにはAmonたちから、姉妹染色分体間の接着を保つしくみがわかったことが報告されている。 減数分裂に備えて細胞が染色体を複製すると、相同な姉妹染色分体の対ができる。対になった姉妹染色分体どうしは、Rec8タンパク質を含む複合体によって腕全体とセントロメアの両方で結合している。減数分裂の第1分裂の早い段階で、ある対の姉妹染色分体の一方が相同染色体の姉妹染色分体の一方に(キアズマを介して)付着し、相同染色体どうしの組換えが起こる。次に第1分裂後期には、キアズマが解消して相同染色体の対が細胞の両極へと分離できるよう、染色体の腕に沿ってRec8が分解しなければならない。ただ、セントロメアのRec8はそのまま残って、第2分裂の時まで姉妹染色分体どうしをくっつけている。 Rec8は、普通は減数分裂の間だけ発現されるが、有糸分裂の時にも実験的に発現させて、姉妹染色分体を結合させることができる。しかしこの場合、腕とセントロメアのRec8が同時に分解されてしまう。つまり減数分裂の際のRec8の挙動は、Rec8自体に備わる要因だけで決まらないことは明らかだ。 そこで渡辺たちは、減数分裂の間に特異的に発現されるタンパク質がもう1つあって、これがRec8を保護しているに違いないと推測し、このタンパク質を有糸分裂細胞でRec8と一緒に発現させれば、姉妹染色分体どうしの接着がそのまま残るという不適切な(おそらくは致命的な)事態になるだろうと考えた。分裂酵母を使って、このような遺伝子を探した結果、彼らはこれまで知られていなかったタンパク質を見つけ、Sgo1(守護神にちなんで)と名づけた。 渡辺たちはさらに研究を進め、Sgo1が普通は分裂酵母の減数分裂の間にだけ発現され、しかもセントロメア付近に限られて存在することを発見した。そのうえ、Sgo1を欠失させると、緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識したRec8は正常にセントロメアに局在するものの、第1分裂後期にほとんどが消えてしまう。そのため姉妹染色分体は、第2分裂の際に正常に分離できない。おそらくそれは、セントロメアの接着がなくなるのが早すぎて、染色体分離機構との正常な結合がこわれてしまうからだろう。 ゲノムデータベースから他の生物のSgo1類似体を探した渡辺たちは、分裂酵母から有糸分裂に必要と見えるもう1つのタンパク質Sgo2を、また出芽酵母からホモログを1つ、さらにショウジョウバエ、線虫、植物、マウス、ヒトからも、もう少し違いのある類似体を見つけだした。減数分裂の染色体分離に異常がある出芽酵母変異株を探したAmonたちは、Sgo1と他にIml3、Chl4という2つのタンパク質にたどり着いた。またAmonたちは、Sgo1のない分裂酵母やIml3あるいはChl4が欠失した細胞(この2つの方が程度は軽いが)でも、減数分裂の際に適切な時期に達する前にRec8がセントロメアから消失することを明らかにした。出芽酵母のSgo1は、普通はセントロメアに局在することもわかった。Sgo1が実際にセントロメアのRec8を守っていることが示唆される。面白いことに、Sgo1に相当するショウジョウバエのMei-S332がセントロメアでの接着の保護にかかわるのではないかと以前にもいわれたことがあるが、対応するタンパク質が他の生物で見つかっていなかったために軽視されていた。 Sgo1がどのように働くのか、詳しい解明は今後の課題である。Rec8と分解酵素とを隔てる物理的障壁なのだろうか。それとも酵素を阻害するのだろうか。疑問点はまだたくさん残っている。

doi:10.1038/fake564

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