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RISCの評価
Nature Reviews Molecular Cell Biology
2004年5月1日
第1の論文はSontheimerとCarthewたちによるもので、巧みな遺伝子スクリーニングでショウジョウバエの目の変異体を調べ、RNA干渉(RNAi)すなわち遺伝子のサイレンシング活性が増強あるいは低下したものを見つけだした。変異した遺伝子座には、dicer-1(dcr-1)とdicer-2(dcr-2)が存在した。この2つの遺伝子は、ショウジョウバエのもつ2種類のダイサー酵素をコードしている。
dcr-2変異体では目や雌の生殖系列細胞でsiRNAが減少し、RNAiがまったく起こらなくなったことから、dsRNAからsiRNAを生じる過程にDcr-2が重要な働きをすることがわかる。
bicoid遺伝子に対応するsiRNAをあらかじめ作成し、ショウジョウバエの卵に注入すると、野生型の卵ではbicoid転写産物量が減少したが、dcr-2変異卵では、RNAi応答に異常があるために、大きな変化は見られなかった。つまりDcr-2は、RNAi経路においてsiRNAの下流で機能していることになる。
dcr-1変異体の【変異体を加筆】RNAi表現型は、dcr-2変異体【変異体を加筆】ほど異常が顕著ではなくsiRNA量も正常で、dsRNAの分解処理を受け持つ主な酵素はDcr-2であると考えると矛盾がない。では、dcr-1変異体もRNAiに部分的な異常があるのはどうしてだろう。bicoidに相補的なsiRNAを作成して注入したdcr-1変異卵には、野生型の卵に比べ6倍もの量のbicoidmRNAが含まれる。つまり、Dcr-1もsiRNAに依存したRNAiの下流で働いていることがわかる。
dcr-1変異体には、発生の異常も見られることから、Dcr-1がmiRNAを介したサイレンシング経路にも役割を果たしていることが示唆される。実際Dcr-1はmiRNAの生成に不可欠で、dcr-1変異卵ではmiRNAが検出できない。遺伝的分析により、miRNAを介した遺伝子サイレンシングには機能をもったdcr-1が必要だが、dcr-2は必要でないことが明らかになった。このようにDcr-1は、siRNAを介したサイレンシングとmiRNAを介したサイレンシングの両方にかかわっている。
第2の論文では、siRNAを活性なRISCに組み込む過程が明らかにされている。この会合過程では、3つの異なった複合体R1、R2、R3の形成が起こっている。野生型ショウジョウバエ由来の抽出物中では、siRNAが存在するとこれらの複合体が形成されるが、dcr-2ヌル変異体由来の抽出物では形成が起こらない。
R1複合体形成能をもつ部分精製分画には、dsRNA切断活性は存在するが、mRNA切断活性は存在しない。パルスチェイス実験でR2、R3複合体中にR1複合体が認められることから考えて、RISC組み立て経路で最初に形成される複合体はR1らしい。またUV架橋実験によって明らかになったのだが、Dcr-2はR1、R2、R3中のsiRNAと直接結合する。
R2複合体の性質の解明はこれからだが、R3複合体形成の中間体と考えられている。mRNA切断活性は厳密にR3複合体に対応しており、これが機能的RISCであることを示している。実際、siRNAが存在するとR3は相補的な標的mRNAに特異的に結合するが、無関係なmRNAには結合しない。RISCに関連する他の既知因子もR3の分画に存在し、siRNAがなくても、あらかじめ部分形成された「ホロRISC」として同時精製される。
Dcr-2が活性なR3複合体中に存在したことや、これら2つの研究でわかったようにdcr-2変異体の胚溶解物があるとsiRNAがRISCと結合できないことを考えると、機能的RISCがsiRNA特異的に形成されるためにはDcr-2が必要ということになる。dcr-1変異体の溶解物があると、R1は形成されるがR2とR3は検出されなかった。つまりDcr-1は、RISC組み立て経路においてDcr-2よりも後の段階で必要なのかもしれない。
Dcr-1とDcr-2がsiRNAやmiRNAによるサイレンシング経路で果たす役割は、それぞれ独特だが、互いに重なり合う部分もある。ダイサー酵素は機能的RISCの形成に必要であり、ショウジョウバエでは、Dcr-1とDcr-2がそれぞれ機能的に異なったRISCの形成にかかわっているのかもしれない。
doi:10.1038/fake566
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