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仲間のあるオーファン受容体

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2004年7月1日

オーファン受容体であるGタンパク共役型受容体(GPCR)のリガンドの同定は簡単な仕事ではない。そして、こうした受容体のリガンドの予想は、リガンドが既知のGPCRとの相同性に基づいて行われることが多い。 しかし、Nature誌に掲載された論文で、Lingらはこういう予想が誤る場合があることを示した。GPR91とGPR99はヌクレオチドをリガンドとして結合すると予想されていたのだが、Lingらは実際に結合するリガンドがクエン酸回路の中間体であることを明らかにしたのである。この結果は、今から60年以上前に発見されたこの生化学的経路に関する新たな興味を引き起こしそうだ。

Lingらは、調べた種々の組織抽出液の中でブタ腎臓の抽出液がGPR91を発現している細胞を活性化することを見出した。この抽出液中に含まれる天然のリガンドを精製したところ、それは思いもかけないことにコハク酸だったのである。GPR91とGPR99は非常によく似ているので、GPR99のリガンドもクエン酸回路の中間体であろうとLingらは考えた。そして実際に、α-ケトグルタル酸がGPR99発現細胞を活性化することを明らかにした。

さまざまな生化学的アッセイを行った結果、GPR91のコハク酸による活性化は、異なるGタンパク質サブユニットを介して機能する、少なくとも2種類のシグナル伝達経路(Gi/Go仲介経路とGq仲介経路)に連結していることがわかった。一方、GPR99はGq仲介経路だけを介して機能しているらしい。また、Lingらは、リガンドによる刺激がGPR91とGPR99のエンドサイトーシスによる取り込みを引き起こすことも明らかにした。これはGPCRの活性化とシグナル伝達の減弱の際によく見られる特徴的な性質である。

さらに、GPCR-リガンド間の相互作用を解明するために、著者らはGPR91の部分的な三次元モデルを作った。そして、4個の正電荷を持つ残基がクラスター状に集まって中央部の溝の方へ向いて、コハク酸結合部位として機能するらしいことがわかった。ほぼ300個のGPCRと比較してみたところ、これらの塩基性の残基4つ全てを持っているのはおもしろいことにGPR91とGPR99だけであることがわかった。したがって、これら2つのGPCRは ジカルボン酸に対する特別な受容体ファミリーを作っている可能性がある。

以前の研究で、コハク酸処理した培養腎臓細胞が、血圧調節に重要な役割を持つ酵素であるレニンを放出することが明らかにされている。そこで、Lingらは論文の最後で、彼らのデータの生理学的な意味について調べている。GPR91とGPR99は主に腎臓で発現されていることが明らかになった。また、ラットでコハク酸を静脈内に注射すると、血漿中のレニン活性が上昇し、コハク酸投与量に依存した血圧上昇が見られた。さらに、GPR91を欠くマウスでは、コハク酸は高血圧を引き起こさないことも明らかになった。

というわけで、この研究ではオーファン型GPCRのリガンドばかりでなく、クエン酸回路中間体が意外にもシグナル伝達機能を持っていることもを突き止められた。そして、Lingらが結論づけているように、この発見は「クエン酸回路と、高血圧やアテローム性動脈硬化症、糖尿病のような代謝病との間の連関の解明や、GPR91やGPR99を分子標的とした新規薬剤の開発を促す」ものとなると考えられる。

doi:10.1038/fake569

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