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治療標的となりそうなSMYD3

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2004年8月1日

遺伝子制御 治療標的となりそうなSMYD3 Nature Cell Biology誌に掲載された最近の論文には、SMYD3(あるいはSET- and MYND-domain-containing-3)遺伝子が同定されたことが報告されている。この遺伝子はヒストンメチルトランスフェラーゼをコードしており、結腸直腸癌あるいは肝細胞癌で過剰発現している。

中村祐輔らは、SMYD3の過剰発現がin vitroでの細胞増殖を誘発すること、また低分子干渉性RNAを使ってSMYD3発現を停止させると複数の結腸直腸癌および肝細胞癌細胞系列でこうした増殖が抑制されることを明らかにして、SMYD3の腫瘍発生との関わりを裏付けた。さらにマイクロアレイ解析を行って、SMYD3を過剰発現している細胞では、原腫瘍遺伝子、細胞周期調節遺伝子や発生に関わる遺伝子を含む複数の遺伝子の発現も上方制御されていることをはっきり示した。

酵母ツーハイブリッドシステムと免疫沈降実験を用い、中村らはSMYD3が熱ショックタンパク質HSP90Aに結合すること、またRNAポリメラーゼIIにも間接的に結合することを明らかにした。SMYD3はヒストンH3のリシン4を特異的にメチル化するが、このタイプのヒストンメチル化は転写の活性化に重要である。さらに、SMYD3の触媒活性はHSP90Aの存在下で誘導される。これはSMYD3がヒストンメチルトランスフェラーゼ活性の補因子として機能することを示している。

しかし、これらのヒストン修飾反応が特定の部位を標的として起こるのはどういう仕組みによるのだろうか。中村らは、SMYD3がDNAの特定の配列に直接結合することを明らかにした。SMYD3によって上方制御される標的遺伝子の1つであるホメオボックス遺伝子Nkx2.8では、そのプロモーター領域にまさにSMYD3結合配列が含まれている。そして、クロマチン免疫沈降実験から、SMYD3がin vivoでこの領域に結合することが明らかになった。

つまり、SMYD3はRNAポリメラーゼIIと転写複合体を形成し、標的遺伝子のプロモーター領域に結合して「ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を持つ転写因子」のようにふるまって、その特定のDNA配列に対してヒストンリシンメチル化活性を発揮するらしい。さらに、SMYD3はある種の腫瘍で理想的な治療標的となる可能性がでてきた。 Arianne Heinrichs

doi:10.1038/fake570

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