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修飾を監視する
Nature Reviews Molecular Cell Biology
2005年1月1日
彼らの方法は、タンパク質とタンパク質の間の相互作用をin vivoでリアルタイムで観察できるバイオルミネッセンス共鳴エネルギー転移(BRET)アッセイ法と、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の活性化に応じてユビキチン化されるβアレスチンを使う方法を発展させたものである。
Bouvierらは、Renillaルシフェラーゼ−βアレスチン構築体(Rluc-βアレスチン)と緑色蛍光タンパク質−ユビキチン構築体(GFP-Ub;ポリユビキチン鎖が形成されるのを防ぐためにユビキチンの変異体が使われている)を作成し、これらの構築体を共発現している細胞にRlucに特異的な基質(基質-1)を加えた。Rlucによる基質-1の加水分解が起こると光が放出されるが、この光のスペクトルはGFPの励起スペクトルと重なっている。つまり、もしGFP-Ubが共有結合によってRluc−βアレスチンと複合体を作ると、BRETが起こってGFPからの蛍光シグナルが観察されると考えられる。
実際に実験を行うとBRETシグナルが観察され、GFP-Ubの濃度の上昇に従ってシグナルは増大し、プラトーに達した(GFPだけ、あるいはRluc−βアレスチンと結合しないようなGFP-Ub構築体を使った場合には、弱くて直線状に増大するシグナルが得られた)。また、GFP-UbとRlucを共発現させた場合はシグナルが観察されなかった。したがってこれらのデータは、観察されたBRETシグナルは、GFP-UbがRluc−βアレスチン構築体中のβアレスチンに共有結合した結果であることを実証しているといえる。
次に著者らは、この手法を使ってGPCRの存在下でGFP-UbとRluc−βアレスチンの間のエネルギー転移を測定すれば、受容体調節型のユビキチン化について調べられることを明らかにした。まず選択的に働くアゴニストを使って受容体を活性化すると、BRETシグナルはアゴニストの投与量に依存する形で増大した。
GPCRの活性化はβアレスチンのユビキチン化とβアレスチンのGPCRへの移行を調節しているだろうと考えられてきた。Bouvierらは、Rlucの2種類の異なる基質とGPCR−黄色蛍光タンパク質構築体(V2R−YFP)を用いて、これらの2つの反応を同時に追跡することに成功した。彼らはGFP-Ub、Rluc−βアレスチン、およびV2R−YFPを発現している培養細胞を2分割し、一方に基質-1を加え(基質-1の加水分解によりGFP-Ubを励起する光が放出される)、もう片方には基質-2を加えた(基質-2の加水分解から放出される光はV2R−YFPを励起する)。V2R−YFPを活性化するとBRETシグナルが観察され、β-アレスチンのユビキチン化と移行が同時に起こっていることが示されたのである。
最後にBouvierらは、βアレスチンと一時的に結合するGPCR(クラスA)と、安定に結合するGPCR(クラスB)を共発現している細胞で、アゴニストによって促進されるβアレスチンのユビキチン化反応の動態をリアルタイムで追跡してみた。その結果、クラスBのGPCRの活性化では、クラスAのGPCRを活性化した場合よりも安定なβアレスチンのユビキチン化が起こることがわかった。したがって、受容体とβアレスチンの間の相互作用の性質が、βアレスチンのユビキチン化反応の動態に影響を及ぼしていると考えられる。 というわけで、Bouvierらはβアレスチンをモデルとして使って、生細胞中での基礎的なユビキチン化、および調節を受けて起こるユビキチン化の過程を、BRETによって特異的に追跡できることを明らかにした。彼らのアッセイ法は、タンパク質の動的なユビキチン化の研究や、この翻訳後に起こる修飾反応によってどういった細胞機能が調節されているかを調べるのに有用といえよう。
doi:10.1038/fake575
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