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細胞周期調節チームのメンバーたち

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2005年2月1日

後生動物の細胞周期の各段階は複数のプロテインキナーゼによって調節されている。さらに、これらのキナーゼ自体もリン酸化反応による調節を受けており、他のプロテインキナーゼと協働している。Bettencourt-Dias、Gloverらはショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)が持っている全てのプロテインキナーゼについて、それらの遺伝子の発現をRNA干渉によってノックダウンして細胞周期にかかわっているかどうかを調べ、その結果をNatureに発表した。

存在すると予想される228種のキナーゼをコードしている遺伝子をそれぞれ、ショウジョウバエS2細胞で下方制御させ、この処理によって生じた細胞系列について細胞周期に欠陥があるかどうかでスクリーニングを行った。フローサイトメトリー解析から、42種のキナーゼについて細胞周期進行の遅れが生じることがわかった。有糸分裂に生じた欠陥の一部はフローサイトメトリーでは見逃されてしまうので、20個のパラメーターについても定量を行い、60のキナーゼが有糸分裂という表現型を持つと結論された。結局、全部で80のキナーゼについて、下方制御により細胞周期の進行あるいは有糸分裂、またはその両方に欠陥を生じることが明らかになった。

細胞周期にかかわっていることが既に知られているキナーゼのほとんどが今回、Bettencourt-Dias、Gloverらによる解析により同定された。これらには、G1-Sの調節にかかわるCdc2cとCdk4、有糸分裂キナーゼであるCdc2、Cdc2を不活性化するキナーゼであるWeeとMyt1、およびTrblキナーゼ(Cdc2を活性化するプロテインホスファターゼのStringのタンパク質分解を誘導する)が含まれている。予想通り、ポロキナーゼとオーロラキナーゼの欠失では有糸分裂に欠陥が生じた。これらの知見をまとめると、キナーゼの働きの一部が細胞種に特異的である可能性はあるにしても、著者らのとった方法がまちがっていないことが実証されたのである。

解析の間に、細胞周期にかかわる新規プロテインキナーゼ類が見つかり、また既知のキナーゼについても細胞周期にかかわる機能を持っていることが新たにわかった。インテグリン結合キナーゼ(Ilk)、Src64Bとgenghis khan(Gek)などの既知のキナーゼの一部は、アクチン細胞骨格の調節体であると見なされていたのだが、例えばgekをノックダウンすると紡錘体に異常が見られ、それによって染色体の配列に欠陥が生じた。細胞骨格に関する機能を持つ他のキナーゼのノックダウンは、G2からM期への移行における欠陥に関連していた。つまり、これらの結果は有糸分裂の初期過程にアクチン細胞骨格がかかわっている可能性を示している。

この研究はまた、増殖因子による外部からのシグナル伝達、ストレスシグナル伝達あるいは細胞の成長調節で機能していることがすでにわかっているキナーゼが、細胞周期にかかわる機能も備えていることを明らかにした。例えば、核内因子(NF)-κB、JNK(JunN末端キナーゼ)あるいはJAK-STAT(Janus-kinase−signal-transducer-and-activator-of-transcription)シグナル伝達経路で機能するプロテインキナーゼの一部が枯渇すると、G1期の細胞の数が増大した。PDGF(血小板由来増殖因子)とVEGF(血管内皮増殖因子)関連受容体であるPvrが下方制御されると、G2期の細胞の数が増えた。Tor(ラパマイシン標的タンパク質)栄養感知シグナル伝達経路中で働くエフェクターキナーゼであるS6kやこの経路で働く他の複数のキナーゼが下方制御されると、小型のG1細胞の割合が増えた。また別の栄養感知シグナル伝達経路で働くプロテインキナーゼであるGcn2のノックダウンでは、紡錘体と染色体に欠陥が生じた。

結局、このゲノム全体にわたる検索は、細胞生理の調節とタンパク質リン酸化による細胞周期の進行の間の相互的な結びつきをはっきりと示したことになる。細胞周期の調節体が高度に保存されていることを考えれば、このような知見はヒトにおけるプロテインキナーゼ系の研究を開始するための興味深い出発点となると考えられる。

doi:10.1038/fake576

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