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炎症を防止する

Nature Reviews Immunology

2002年2月1日

慢性関節リウマチ(RA)は、滑膜性関節が侵されて運動能力が失われる自己免疫疾患で、慢性的な炎症と軟骨及び骨の破壊が特徴である。この疾患の発病には、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)やインターロイキン6(IL-6)のような炎症性サイトカイン類が関与していると考えられてきた。Shoudaらは、最近The Journal of Clinical Investigationに発表した論文で、サイトカインを介するシグナル伝達を調節するSOCS3/CIS3(サイトカインシグナル伝達サプレッサー3/サイトカイン誘導性SH2タンパク質3)の発現を誘導することにより、サイトカインシグナル伝達を阻害してやると、マウスの自己免疫性関節炎で見られる骨の破壊が大幅に減少することを報告しており、この系が治療の新しい標的となる可能性があると述べている。 関節炎が起こる際にIL-6が果たす役割は、以前に行われた研究によりin vitroでもin vivoでも解明されている。IL-6の機能はJanusキナーゼ(JAK)チロシンキナーゼと、転写因子STAT3(シグナル伝達体および転写活性化因子3の略称)の活性化である。Shoudaらは、以前にSOCS3のクローニングを行い、このタンパク質がJAKキナーゼを阻害すること、およびSTAT3の機能の負の調節を行うことを明らかにした。SOCS3の発現はIL-6により強く誘導されるので、ShoudaらはSOCS3がRAの進行で負の調節を行う機能を有しているのかどうか調べてみた。 RAにおいてSTAT3の活性化とSOCS3の誘導が重要な役割を持つかどうかを調べるために、アデノウイルスを遺伝子導入のベクターとして用いて、RA患者から単離した滑膜細胞(synoviocyte)中で、SOCS3あるいはSTAT3の優性ネガティブ型(dnSTAT3)を過剰発現させる実験が行われた。dnSTAT3とSOCS3のどちらかが過剰発現するようになった細胞は、増殖が有意に遅くなり、またIL-6やTNF-αの産生も減少した。この結果は、RA患者由来の滑膜細胞のin vitroでの増殖およびサイトカイン生産がJAK/STAT3シグナル伝達に依存して行われており、これらの過程はSOCS3あるいはdnSTAT3の発現により阻害されることを示している。 では、STAT3やSOCS3はin vivoでの関節炎の進行に何らかの影響を及ぼすだろうか。Shoudaらは、抗体誘導関節炎(AIA)またはコラーゲン誘導関節炎(CIA)を起こしやすいマウスモデルの足首関節にSOCS3またはdnSTAT3遺伝子を組み込んだアデノウイルスを注射してみた。AIAモデルでは、注射を行わなかった対照マウスに比較すると、dnSTAT3もCIS3も共に、関節炎の症状や関節の腫脹を大幅に低減した。しかし、CIAモデルでは、SOCS3が関節炎の症状をかなり軽減したのに対し、dnSTAT3アデノウイルスはSOCS3ほどの効果は示さなかった。最終的に、SOCS3アデノウイルスが慢性の関節炎に対する効果的な治療法になることも明らかにされた。 Shoudaらは、アデノウイルスを使ったSOCS3遺伝子の導入がRAの発病原因を効果的に阻害する新しい治療方法となる可能性があると結論している。

doi:10.1038/fake593

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