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細胞間シグナル伝達を促進する

Nature Reviews Immunology

2002年3月1日

セリン/トレオニンキナーゼのPIMファミリーは、少なくとも3つのメンバーからなり、それらは癌遺伝子であるmycあるいはbcl-2と協同してリンパ性悪性腫瘍を誘発することがある。しかし、現在までのところ、PIM-1の機能がどういうもので、生理的な基質が何なのかが詳しくわかっているわけではない。最近、KoskinenらはJournal of Immunology誌に掲載された論文で、PIM-1はNFATc1(細胞質性・カルシニューリン依存性T細胞活性化核因子1)をリン酸化して、NFATに依存して起こる転写を促進していることを明らかにしている。 PIM-1の発現はT細胞の活性化の際に上方制御される。T細胞が活性化されると、AP-1(プロテインキナーゼCとRasにより誘導される)とカルシウム依存性のシグナル伝達によってNFATcの脱リン酸化が引き起こされ、NFATcは核内に移行し、さらにAP-1と結合してインターロイキン-2(IL-2)などの遺伝子を活性化する。 著者らは、まずPIM-1キナーゼの、NFAT活性化に関わるシグナル伝達における役割に注目した。まず、ジャーカットT細胞にPIM-1発現ベクターとNFAT結合部位を持っていてるレポーター構築体を直接導入した。このT細胞を、ホルボール12-ミリステート13-アセテートとカルシウムのイオノフォアであるイオノマイシンにより活性化すると、細胞に含まれているNFATの活性がPIM-1により増大された。さらに、生理的条件下でPIM-1の標的がNFATなのかどうかを調べるために、ジャーカットT細胞を刺激して培養液中に分泌されるIL-2の量を測定した。刺激を受けたジャーカットT細胞にPIM-1を導入すると、IL-2の産生量は、導入していない細胞に比べてかなり増加した。PIM-1のキナーゼ活性が欠失している変異体では、NFAT活性やIL-2の産生の促進は見られなかった。免疫共沈降実験から、PIM-1 は物理的にNFATc1と結合することがわかり、in vivoでリン酸化を行うことが可能だろうと考えられた。 この研究は、キナーゼがNFAT活性の正の調節を行うことを実証した最初のものである。しかし、他のキナーゼによるリン酸化は、NFATcの核内移行を阻害する。今回の結果は、ジャーカットT細胞ではPIM-1がRasの下流で働いて、NFATc1のリン酸化とIL-2の産生を誘導していることを示唆している。

doi:10.1038/fake594

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