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Nature Reviews Immunology
2003年6月1日
NK細胞の活性化は、阻害性受容体、あるいは活性化受容体から送られるシグナルのバランスによって調節されている。活性化されたNK細胞の重要な役目は、ストレスがかかった細胞、つまり感染したり、形質転換を起こした細胞を殺すことである。このような細胞は、NKG2Dのリガンドであるレチノイン酸初期誘導分子(Rae1、マウスの場合)や、MHCクラスI関連分子(MICAやMICB、ヒトの場合)を発現している。今まで、細胞傷害活性は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含むアダプタータンパク質と受容体との結合により生じて、SYKファミリーに属するタンパク質キナーゼのSYKとZAP70が関わっている場合が殆どであると考えられてきた。しかし、DAP10は、DAP12とはちがってITAMを含まない。そして、少なくともT細胞では、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の結合モチーフを介して副刺激に関わっている。
Colucciらは以前、マウスNK細胞の細胞傷害性がITAMを含む受容体とは無関係に誘導され得ることを明らかにしている。さらに彼らは、Dap12、あるいはSykとZap70のどちらかを欠くマウスNK細胞を使って、Nkg2dの機能におけるDap10-PI3K経路の役割を調べた。Sykを欠いた場合は胚性致死となるので、Syk-/-Zap70-/-胚由来の胎児肝細胞を使ってリンパ組織形成不全マウスを再構成した。こういうキメラマウス由来のNK細胞と、Dap12欠損マウス由来のNK細胞は共に、in vitroあるいはin vivoで活性化された後、Rae1を発現している標的細胞を殺すことができた。しかし、標的細胞がMHCクラスI分子も発現している場合、この傷害作用の効果が低減した。この活性にDap10-PI3K経路が関わっていることは、NK細胞による細胞死がPI3Kに特異的に働く阻害剤によって阻害されることによって確かめられた。つまり、MHCクラスIリガンドと阻害性受容体との結合から生じる負の調節にうち勝つためには、Nkg2dによってNK細胞の全面的な活性化が開始された上に、サイトカインによるシグナルやDap12経路を含む補助的なシグナル入力が必要らしい。
Billadeauらは、ヒトNK細胞で発現されるNKG2Dの結合によって誘導される経路について調べた。彼らも、NK細胞の、SYKファミリーに属するタンパク質キナーゼに依存しない細胞傷害活性に関わるDAP10-PI3K経路について報告しており、その結論はColucciらと一致している。
結局、これらの研究はともに、NK細胞の細胞傷害活性について、以前には知られていなかった仕組みが働いていることを突き止めたことになる。経路の選択肢を1つ以上持つことで、NK細胞は腫瘍や感染に対して効率よく防御するというチャンスを増やしているのかもしれない。
doi:10.1038/fake601
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