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マスト細胞が行うリモートコントロール

Nature Reviews Immunology

2003年12月1日

「腺」の腫れは、細菌感染を起こしたことを知らせる最初のサインの1つであることが多い。こういうリンパ節の腫張は、体中を循環しているリンパ細胞が排出リンパ節に集まって来た結果である。リンパ細胞はリンパ節で微生物由来の抗原を載せている抗原提示細胞(APC)と相互作用を行って、それにより適応免疫応答が開始される。感染箇所で細菌が生産する物質がAPCの移動と成熟を引き起こすと考えられているが、T細胞のリンパ節への移動集合を調節するシグナルについてはわかっていなかった。今回、Nature Immunologyに発表された論文により、この反応経路でマスト細胞が中心的な役割を果たしていることが明らかになった。 マスト細胞は、細菌に対する自然免疫応答の重要な構成因子であり、自身の脱顆粒と腫瘍壊死因子(TNF)などの炎症メディエーターの放出を行う。今回、McLachlanらは局所感染のマウスモデルを使って、細菌が引き起こすリンパ節腫張の調節にマスト細胞が関わっている可能性、つまり適応免疫による防御にマスト細胞が関わっているのかどうかを調べた。 野生型マウスでは、足裏に細菌を注射すると24時間以内にリンパ節腫張が起こった。しかし、マスト細胞を持たない(W/Wv)マウスでは、この腫れが著しく小さかった。W/Wvマウスの足裏に、細菌投与に先だってマスト細胞を注射しておくと、野生型マウスで見られるのとほぼ同じレベルのリンパ節腫張が起こり、この過程にマスト細胞が重要な役割を持つと考えられた。McLachlanらは特異的に働くマスト細胞活性化因子(48/80)を使って、このことを立証した。この活性化因子を細菌の代わりにマウスの足裏に注射した場合も、かなりのリンパ節腫張が起こったのである。 感染部位についてさらに詳細に調べたところ、細菌を植え付けてから4時間後、マスト細胞の総数は増加していなかったが、脱顆粒したマスト細胞の割合は増大していた。このことからすると、マスト細胞は遠く離れたところから働きかけて、リンパ節腫張を誘発しているらしい。そして、マスト細胞は感染部位から離れてリンパ節のところまで遊走していくのでなく、マスト細胞の脱顆粒によって生産された物質がリンパ節に流れ込み、腫張を引き起こすシグナルを伝えるのだろうと考えられる。 では、マスト細胞が産生する物質のどれがこの過程に関わっているのだろうか。マスト細胞が放出する炎症メディエーターの中ではTNFだけが強力な腫張効果を示すことがわかり、感染(あるいは48/80によるマスト細胞の活性化)の3時間後には排出リンパ節中のTNF濃度が著しく上昇することも明らかになった。さらに、マスト細胞が活性化されるとリンパ節に移動してくるT細胞の数は3倍に増加した。 今回の研究では、マスト細胞がTNFを放出することで感染初期に重要なシグナルを送り、遠く離れた場所から排出リンパ節の腫張を引き起こして、適応免疫応答を開始させていることが示されたのである。

doi:10.1038/fake606

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