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サイトカインに出口を教える

Nature Reviews Immunology

2006年3月1日

ヘルパーT細胞(TH)の活性化は、免疫応答の運命を決定し得るさまざまなサイトカインの分泌を引き起こす。このようなサイトカインは他の免疫細胞が一杯詰まっている領域へと分泌されるのだが、ではT細胞はどうやって特異的な標的細胞をまちがいなく選ぶのだろう。Huseらは、細胞内情報伝達の特異性が保持される仕組みを突き止め、TH細胞が持つ、方向性のそれぞれ異なる2つのサイトカイン分泌経路についてNature Immunologyに報告している。その1つは免疫シナプス、つまりT細胞と抗原提示細胞が接触する部位に細胞表面タンパク質の特異的再構築により形成される特別な領域に向かう経路、もう1つは多方向性の経路である。

今回の研究でHuseらは細胞内サイトカイン染色法を用い、活性化されたTH細胞では、インターロイキン2(IL-2)とインターフェロンγ(IFN-γ)の分泌が、IL-3およびIL-10と同様に免疫シナプスに集中していることを明らかにしている。これとは対照的に、腫瘍壊死因子(TNF)の分泌が免疫シナプスに集中する時間は短く、免疫応答が進行するにつれて細胞全体にTNFが広がっていく。ビデオ顕微鏡を用いて、生きたTH細胞では分泌されたTNFは細胞全体に広がっていき、少しずつ免役シナプスから離れていく傾向があるとわかった。CC-ケモカインリガンド3(CCL3)とCCL5の細胞内分布はTNFと似ていたが、TNFより分散が遅かった。さらに、TH2細胞に関連するサイトカインであるIL-4は細胞全体に分布していることがわかった。

しかし、細胞はどうやって、一部のサイトカインだけを一定方向だけに移動させ、その他のサイトカインは別の経路によって移動するように調節しているのだろうか。今回の研究により、一部のサイトカインには特定の輸送タンパク質が共局在しており、共局在の場所もサイトカインごとにちがうことが明らかになった。RAB3DとRAB19は低分子量GTPアーゼのRABファミリーに属し、それぞれ別の細胞内区画に存在している。これらは免役シナプスでIL-2とIFNγと共局在していることがわかった。一方、SNARE(soluble N-ethylmaleimide-sensitive accessory-protein receptor)タンパク質であるシンタキシン6は、細胞内全域にわたってTNFの存在場所に共局在していた。これらのことは、サイトカインによって、方向性の決まった放出を行う過程が異なっていることを示している。

これらの結果をまとめると、T細胞は特定の輸送タンパク質を使い、異なる2つの経路を介することで、それぞれのサイトカインを決まった方向に輸送していると考えられる。経路の1つは特定のサイトカインを免役シナプスに集中させるもので、そこでは局所的な細胞間情報伝達が起こり得る。もう1つの経路は主に炎症や細胞の動員にかかわっているサイトカインを放出するためのもので、サイトカインは周囲の環境全体に向けていろいろな方向に放出される。したがって、TH細胞が行うサイトカイン応答は誘導されたサイトカインの種類だけによって決まるのではなく、その放出方法にも左右される可能性がある。

doi:10.1038/fake629

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