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食餌と微生物多様性
Nature Reviews Microbiology
2004年3月1日
マイマイガの中腸は通常pH 8~10であるがpH 12に達することもあることから、生息する細菌がアルカリ性環境にいかに対応するかを研究する良いモデルとなっている。酸性環境で生育する微生物群集についてはヒトの胃あるいは温泉などの環境での記録が報告されているが、アルカリ性環境に対応できる微生物群集についてはよくわかっていない。本研究では、培養、PCRおよび末端制限切断長多型(T-RFLP)を組み合わせてガにおける細菌群集の解析を行った。
Broderickらは、培養あるいは野外で採集した卵を無菌状態で孵化し人工試料で飼育したマイマイガの幼虫1匹ごとの消化管の微生物群集を分析した。PCRおよびT-RFLPより、微生物構成は以外に一定で卵の起源に依存しないことを明らかにした。
新しい細菌系統型がいくつか同定されたが、全体的な多様性は7から15の系統型の範囲内であり、少なくとも500の系統型を有するヒト腸や50系統型以上を有するシロアリ腸に比べて多様性が低かった。培養に依存しない方法で新しい系統型が発見されたことは十分予想できた結果だが、意外なことに培養によっても新しい系統型が発見され、その中には既知の細菌種と遠い関係のものもあることが分かった。
1種類の卵から孵化して異なる食餌を与えられた幼虫の腸の調査から、食餌がガの腸の微生物多様性に大きく影響することを発見した。しかし、食餌の内容に関わらず、Enterococcus faecalisと未培養のEnterobacter種はガの腸に常駐していた。E. faecalis単離体は臨床単離体とは生理学的に大きく異なっており、Enterococcus種は従来考えらている以上に多様性に富むのかもしれない。
最も大きな昆虫目の1つであるガおよびチョウと微生物共生生物との関係についての研究はあまり行われていない。腸内の細菌はどこから来たのか、細菌群集はアルカリ性環境にどう適応しているのか、そして共生細菌は昆虫の生理機能および発生に寄与しているのか、など難問が投げかけられている。このモデル系をメタゲノム解析と組み合わせて、研究者は昆虫の腸の微生物群集の構成と機能の関係解明に着手しつつある。
doi:10.1038/fake739
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