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汚染物質を吸い取る
Nature Reviews Microbiology
2004年6月1日
フィトレメディエーション、すなわち植物を利用した環境からの有害汚染物質の浄化はバイオレメディエーションの新しい方法である。遺伝子組み換え技術を活用して、一般に細菌から、適当な植物種にフィトレメディエーションの性質を導入するものである。今回、Baracらは大部分の植物の維管束組織に存在する内生部寄生細菌に適切な分解特性を導入する新しい方法を述べている。
Baracらは、 キバナルピナス(yellow yellow lupin)とバークホルデリアセパシア菌(Burkholderia cepacia)を用いてこれに関する実証試験を行った。トルエン分解経路の遺伝情報をコードするプラスミドを有する土壌微生物であるB. cepaciaG4株を、天然の内部寄生株、B. cepacia L.S.2.4.派生体であるB. cepacia BU0072と接合し、得られたトルエン分解性内生部寄生株をB. cepacia VM1330と命名した。
BU0072、VM1330あるいはG4をルピナスに接種し、21日間生育させた。根および茎の細菌量を解析し、これら3種のB. cepaciaが植物に定着したことを確認した。次に、トルエンの植物の成長への影響を調べた。土壌ではなく栄養分を溶解した水液中で生育する水耕栽培において、未接種の対照およびG4あるいはBU0072を接種した植物の成長には100 mg l−1-1以上の濃度のトルエンは毒性であるのに対し、VM1330を接種した植物ではトルエン濃度1 g l−1-1まで成長に影響を受けなかった。土壌消毒をしていない温室で育てた植物におけるVM1330のトルエン分解プラスミドの防御効果は、トルエン濃度500 mg l−1-1まで及ぶことが分かった明らかであった。さらに、VM1330を接種した植物では、トルエンの蒸発散量(蒸発と蒸散の総和)は、対照となる株の場合より50から〜70%少ないことより、VM1330の接種によりトルエンの分解が向上することを示唆した。
したがって、トルエン分解プラスミドを発現するB. cepaciaは、キバナルピナスをトルエンの毒性から防御すると共に、広くみられるこの一般的な汚染物質の植物中in plantaでの分解を向上させている。今後Baracらは深く根を張る樹木であるポプラでフィトレメディエーションの研究へと進むことを考えを進めており、すでに150種類のポプラ内生部寄生菌を特定している。
doi:10.1038/fake741
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