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歴史を語る配列の決定

Nature Reviews Microbiology

2004年12月1日

性決定メカニズムは非常に多様であることが知られている。配列決定法が革命的に進歩したため、将来は形成された性決定の進化上の過程を解くことができるだろう。Joseph Heitmanらは最近発表された論文でまさにこの問題に挑み、ヒトへの病原性を有する真菌、Cryptococcus neoformansの接合型(MAT)遺伝子座の進化の歴史について報告している。また、C. neoformansMAT座とヒトのY染色体との興味深い共通点を明らかにした。

真菌では、和合性の細胞接合型間でのみ有性となる。珍しいことに、C. neoformansMAT座はSaccaromyces cerevisiaeの属する子嚢菌類およびC. neoformansの属する担子菌類の菌の両方のMAT座と類似している。S. cerevisiaeのように、C. neoformansは2種類の対立遺伝子、aとαを有する1つのMAT座からなる二極性接合系である。しかし、このMAT座はS. cerevisiaeのものより大きく、一部の4極性担子菌類の2種類の性決定遺伝子座に類似した遺伝子型を有している。どのようにして単純な遺伝子座から複雑な性決定領域へ進化してきたのかを解明するために、HeitmanらはC. neoformansの2つの変異体および近縁種であるCryptococcus gattiiMAT座の配列を比較した。

時を経て蓄積された同義変異の数を基に、C. neoformansMAT座内の遺伝子は、進化過程のどの時期にMAT遺伝子座が獲得したかにより、「古代」、「中間」、あるいは「新しい」ものに分類できることを発見した。古代のものは2種類の祖先の性決定領域を表していることを示唆した。その1つはフェロモンおよびフェロモン受容体遺伝子、もう1つはホメオドメイン遺伝子である。フェロモン遺伝子座はいくつかの中間遺伝子と共にフェロモンシグナリングカスケードの別の古代の要素を獲得するために拡大し、ホメオドメイン遺伝子座は減数分裂に機能すると考えられる他の中間遺伝子を獲得した、との仮説をたてた。2つの接合型のうちの1つでは、染色体転座によりフェロモンとホメオドメインクラスターが融合し、新しいものに属する遺伝子が捕らえられた。その結果、フェロモンクラスター、ホメオドメインクラスターおよび融合したクラスターからなる3極性接合系が生じ、それが遺伝子変換によって崩壊し、現在C. neoformansで見られる2極性のものになった。

Heitmanらは、C. neoformansMAT座は他の真菌類の性決定遺伝子座に似ているのみではなく、動植物の性染色体と同様な特徴を有することを示す魅力的な証拠も挙げている。興味深いことに、ヒトY染色体にも順を追って獲得した遺伝子を示す4種の一時的なクラスターが存在する。著者らはこの点およびフェロモン遺伝子のパリンドローム配向などの興味ある相同性を示し、将来C. neoformansが性染色体の動態を解明するためのモデルとなる可能性を論じている。

doi:10.1038/fake746

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