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薬剤耐性の先を行く

Nature Reviews Microbiology

2005年4月1日

HIV-1に対する抗レトロウイルス療法の開発に有望な新たな標的が同定されたことが、The Journal of Clinical Investigationに掲載された最近の研究で明らかにされた。

現在、HIV感染患者はウイルス蛋白質タンパク質であるHIV-1逆転写酵素、HIV-1プロテアーゼおよびgp41さまざまgp41を標的としてHIV-1のライフサイクルを阻止する様々な薬剤を併用する治療を受けている。これらの薬剤の組み合わせにより、ここ数年のHIV-1感染による死亡率は著しく減少している。しかし、HIV-1は既存のすべての薬剤に対して耐性を獲得する可能性があり、多剤耐性株に感染した患者数は増していて今後の治療の選択肢は限定されつつある。そこで、新たな抗HIV-1薬の開発は急務である。特に、現在の治療法と交叉耐性を生じる可能性の少ない新たな作用メカニズムの薬剤が必要である。

今回、Hauberらは、宿主細胞因子のヒトデオキシハイプシン合成酵素【deoxyhypusine syntase】(DHS)を阻害することにより、高活性抗レトロウイルス剤療法(HAART)耐性株を含むHIV-1の複製を阻止することに成功したことを報告している。クローン病の第二相試験が進行中の小分子、CNI-1493がDHSを強力に阻害することがわかった。RNAiによるDHS阻害でも、細胞培養および初代細胞においてDHSが効果的に阻害された。著者らは、次にT細胞向性およびマクロファージ向性実験室株、HIV-1および一連の抗レトロウイルス治療耐性ウイルス感染患者由来の末梢血単球細胞をCNI-1493存在下で培養し、ウイルス複製を効果的に阻止することができた。このことから、CNI-1493が薬剤耐性ウイルスの理想的な阻害剤となることが示唆された。

通常、DHSは不活型真核生物開始因子5A5A(eIF-5A)をハイプシンを有する活性型に変換する22段階からなる反応の初段階を開始させ、eIF-5Aを活性化させる。eIF-5Aは特定の細胞性RNAの代謝に関与しているとともに、HIV-1の複製に必須な調節蛋白質タンパク質Revの細胞性補因子である。したがって、DHSを阻害するとeIF-5Aの活性が妨げられ、ウイルス複製が抑制されるのである。しかし、CNI-1493の抗DHS活性の詳細な作用機構はまだわかっていない。

重要なことは、CNI-1493の作用はDHSの阻害に限定されていることである。eIF-5A活性の阻害剤に関する別の研究では、ウイルス複製を阻害する範囲の濃度でアポトーシス、細胞周期の進行および細胞毒性に有害な影響が見られるが、CNI-1493ではこのような影響は見られなかった。したがって、今回の研究は、現在行われている治療に耐性を示すHIV-1株に効果的な抗ウイルス治療法として、DHSの小分子阻害剤が開発されたことを証明するものである。

doi:10.1038/fake750

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