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MsbAの反対側
Nature Reviews Microbiology
2005年7月1日
リポ多糖(LPS)は内膜の内側リーフレット(小葉部分)で前駆体分子として合成される。次に外側リーフレットに輸送され成熟型LPSが形成されてから、外膜に輸送される。この過程に必須であるABC輸送体MsbAは内膜を通過するLPSの輸送に関与している。開放型および閉鎖型コンフォメーションのMsbAの2つの結晶構造が得られているが、リガンドがないためこれらの構造が機能およびATPアーゼサイクルとどう関連するかの解釈が困難であった。基質存在下での新たな結晶構造および部位特異的スピン標識(SDSL)解析により、基質輸送およびATP加水分解中のMsbAのコンフォメーション変化をより動的に描けるようになった。
Reyes とChangは、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)MsbAのマグネシウム、ADP、無機バナジン酸、およびLPSとの複合体の構造を、平均解像度4.2Åで示した。これまでに報告されている構造と比べ、これらのMsbA分子は加水分解後の状態であるようだ。ATP加水分解により2つの膜貫通領域(TMD)からなる剛体が大きく動き、ペリプラズムからのみ接近できる空間が生じる。このような構造の変化からは、TDMからヌクレオチド結合ドメイン(NBD)へコンフォメーション変化が伝わるであろう機構も示唆される。
Dongらの行ったSDSL解析は、ぺリプラズムループへの近づきやすさや移動度など明らかに異なる点はあるものの、Reyes とChangの観察した構造を大筋で認めるものであった。
両グループは、構造データを基にMsbAによる「フリップフロップ(flip-flop)」機構を支持するモデルを提唱している。基質であるLPSは高親和性表面結合部位でMsbAに結合する。このコンフォメーション変化がTMDからNBDへ伝わり、その結果ATP結合および加水分解が生じる。1分子のATPの加水分解により生じた自由エネルギーにより内側の空間が閉じ、LPS糖頭部を捕捉し、TMDの剛体が動いて180°「フリップ(反転)」して疎水性尾部が膜を通過して引っ張られる。2個目のATP分子の加水分解によりNBDが離れ、MsbAは元のコンフォメーションにもどる。
両論文の結果は、ABC輸送体分野および多剤耐性への取り組みのみでなく、膜タンパク質一般の解明に関しても重要な一歩である。
doi:10.1038/fake752
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