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不和合性の解析:ボルバキア(Wolbachia)を対象にする
Nature Reviews Microbiology
2005年9月1日
CIが核合体の破壊により機能することは示唆されているが、このようなタイプの繁殖性寄生の分子機構については他にはほとんどわかっていない。そこで今回Steven Sinkinsの率いるグループは サンガー研究所のJulian Parkhillの協力を得て、CIはアンキリン(ANK)ドメインとよばれるタンパク質モチーフをコードする遺伝子により行われることを明らかにした。これらの遺伝子がボルバキアのゲノムの活発なプロファージ粒子上にあることは重要な点で、内部共生体であるボルバキアの繁殖するのに利用される広範な方法における可動性DNAおよび遺伝子の水平転移の役割が示される。
CIの解明の第一歩として、SinkinsらはCulex quinquefasciatus(イエカ属)内のWolbachia pipientisのwPip株のゲノムを解析し、ANK反復を有するタンパク質をコードする遺伝子がたくさんあることを明らかにした。ANK反復タンパク質は宿主の細胞周期の調節および細胞分裂に関与しており、このモチーフは原核生物にはめずらしい。そこで、ANK遺伝子がCIを媒介する第一候補となった。相いれないC. quinquefasciatusのBeiおよびPel株内のボルバキア由来のANK遺伝子の配列を比較し、pk1およびpk>2の2つの遺伝子座を同定した。これらは株間でDNAおよびアミノ酸配列が大きく分岐していた。pk1およびpk2の配列変動はイエカ属の他の株間でも見られ、pk2遺伝子の1変異体は宿主の性特異的に発現することから、CIにおけるpk2の役割を示すさらなる証拠となった。
ところで、昆虫宿主の適応がCIに影響を及ぼすのだろうか。理論的には、和合性を回復するような宿主核ゲノムの突然変異は自然に選択され、CIによる遺伝子の流れに対する障害が破壊されると予想される。本研究で、著者らはこの考えを支持する証拠を示している。彼らはBei株のWolbachiaを有するがPelの核ゲノムを持つC. quinquefasciatus株P(wB)を作成した。P(wB)のメスをPelのオスと交配すると、和合性が完全に回復した。
この研究の最も興味をひく結果は、pk1およびpk2は共にボルバキアのゲノムのプロファージ領域に位置することだろう。Sinkinsらは、さらに、これらの領域は活発であり、可変性ANK遺伝子を有するプロファージが産生され宿主細胞内でファージ粒子にパッケージされることを明らかにした。
CIと推定される遺伝子が可動性遺伝要素上にあるという発見は、広範囲にわたって意味がある。ヒトに病気を撒き散らす多くの昆虫はボルバキアを宿しており、これら昆虫個体群により、ボルバキアを用いて病気の原因となる病原体の伝播を阻止できるトランス遺伝子を作用させることを長い間科学者は夢見てきた。残念なことに、ボルバキアの遺伝子操作に関しては今のところうまくいっていない。しかし、「CIの分子機構が明らかになれば遺伝子操作が可能になるだろう。そして、これら2つの可変性のプロファージ上のANK遺伝子がこの過程の助けとなる重要なマーカーとなるだろう。」と著者らは述べている。
doi:10.1038/fake754
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