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過去をよみがえらせる
Nature Reviews Microbiology
2005年12月1日
1918年のインフルエンザウイルスのゲノム配列決定プロジェクトは、1995年Jeffrey Taubenbergerのグループによる保存された検死試料の分析から始まった。これらの試料および永久凍土に覆われたアラスカの墓地に埋葬されていたインフルエンザの犠牲者から得た肺組織を用い、今回、Taubenbergerらは1918年ウイルスの全ゲノム配列を決定することに成功した。A型インフルエンザウイルスのゲノムは8つの分節からなる。5つの分節の配列についてはすでに報告されており、今回、TaubenbergerらがNatureに報告したのはPA、PB1およびPB2からなる三量体ポリメラーゼ複合体の遺伝子配列である。
ポリメラーゼ複合体遺伝子の分析により、他のゲノム分節の分析から導かれた1918年ウイルスの起源に関する結論を確認することができた。1957および1968年に世界的流行を起こしたウイルスは、ユーラシア大陸の水鳥の株とヒト適応株の遺伝子が混ざったものと考えられているが、1918年株は遺伝子が混ざったものではなく、完全なトリウイルスがヒトに適応したものである。ウイルスの起源について詳細はわかっていないが、ゲノム配列は分析可能なトリインフルエンザウイルスの配列のいずれとも異なることより、進化的に他とは孤立したウイルスを起源とするのであろう。興味深いことに、ポリメラーゼ複合体遺伝子にみられるトリに共通の配列におけるアミノ酸変異のいくつかは、現在蔓延しているH5N1高病原性ウイルスに認められた。
Scienceに報告された別の研究で、Terrence Tumpeyらはリバースジェネティックスを用いて1918ウイルスと同一のコード配列のウイルスを作成した。再現されたウイルスはマウスに高い病原性を示し、接種4日後には現代のインフルエンザ株感染の場合の39,000倍のウイルスを産生した。さらに、再現ウイルス感染マウスでは、2日後に体重が13%減少し、ウイルスは感染後わずか3日で致死性を示した。Tumpeyらは1918年株を再現させると共に、1918遺伝子を異なる組み合わせで有するウイルスも作成し、ヒト細胞における複製を最も高めるのにはポリメラーゼ複合体と血球凝集素が必要であることを明らかにした。
1918ウイルスを再現することに、安全性の面で懸念を示している関係者もいる。しかし、ウイルスを扱うすべての作業は厳密なバイオセーフティーレベル3の強化された条件で行われており、再現されたウイルスを取り扱ったのは一人だけであった。新たなインフルエンザの世界的流行への不安が増大するなかで、高病原性インフルエンザウイルスについて理解するために、このような研究は極めて重要である。
doi:10.1038/fake756
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