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生きるために生き続けさせる
Nature Reviews Microbiology
2006年1月1日
腫瘍を引き起こすヘルペスウイルスであるEBVはB細胞を標的とし、潜伏感染を樹立する。潜伏感染状態ではウイルスは複製せず、ウイルスゲノムを感染細胞内に維持している。この過程では、EBVのライフサイクルの潜伏期樹立に関与する11のウイルス遺伝子が発現する。これらの遺伝子の発現は、EBV感染の特徴であるB細胞形質転換および増殖にも直接的に貢献している。11の「潜伏性」遺伝子のほかに、ウイルスは80以上の遺伝子をコードしている。その中には細胞性Bcl-2の同属体(vBcl-2) 2つが含まれており、これらの遺伝子は他のウイルスで宿主細胞のアポトーシスおよびそれに続く早い死を阻止することがわかっている。本研究で、Markus AltmannとWolfgang Hammerschmidt は潜伏性EBV感染開始および維持におけるこれらの遺伝子、すなわちBHRF1およびBALF1の役割を調べた。著者らは両遺伝子を不活化した変異ウイルスを構築した。変異ウイルスに感染した初代の休止B細胞は細胞周期が進行せず迅速にアポトーシスが起こるため、ウイルスの潜伏感染樹立能が阻止される。vBcl-2遺伝子の不活化により、ウイルスによるB細胞の形質転換も阻止される。RT-PCRによるBHRF1およびBALF1遺伝子発現の解析より、両遺伝子は感染の初めの段階で発現が最大であり、潜伏感染が樹立してしまうと発現もしないし必要ともされないことがわかった。これらの結果をまとめると、2つのvBcl-2遺伝子の初期における一過性の発現によりEBV感染B細胞のアポトーシスが阻止されることが明らかにされた。感染初期段階をとおして宿主細胞を生き続けさせることにより、EBVは他の潜伏性遺伝子を活性化し発現させることができ、それによりウイルスは持続し最終的には細胞形質転換およびEBV関連B細胞リンパ腫に導く過程が開始する。
本研究で示された研究成果は、潜伏性ウイルス感染におけるvBcl-2タンパク質の直接的な役割をはじめて明らかにしたものである。今後の研究の興味ある問題の1つは、ライフサイクルの一部として潜伏感染を樹立する他のウイルスにおけるvBcl-2同族体の役割解明である。BHRF1およびBALF1の発現を調節する分子機構の研究も始めるべきである。それにより新世代の抗ウイルス戦略に導く知見が得られるだろう。
doi:10.1038/fake757
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