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進化する病原性
Nature Reviews Microbiology
2006年2月1日
多くの植物病原性細菌はIII型分泌機構を通して病原性エフェクタータンパク質を植物細胞に注入する。これらのエフェクターがないと病原体は基本的な宿主の防御を打破することはできない。ところが、エフェクターのなかには植物の防御を裏切る二重スパイ分子としてはたらく非病原性エフェクターとよばれるものがある。このような植物では伝染性の病気に対する耐性は、耐性遺伝子産物により細菌エフェクターを特異的に認識することに基づいている。エフェクターが認識されると、超感度耐性【hypersensitive resistance】反応(HR)が生じその結果植物は抗微生物応答を樹立する。細菌病原体がこのような宿主防御を克服する仕組みを解明するために、Andrew Pitmanらは新しい病原型の Pseudomonas syringae(シュードモナスシリンゲ)pv.phaseolicolaの出現に焦点を当てた。この細菌は経済的に影響の大きい一般の豆の病気であるかざ枯病【halo-blight disease】に関与している。本病原体は、対応する耐性遺伝子を有する植物に遭遇すると超感度耐性反応を生じる多くのエフェクターをコードしている。著者らが耐性反応状態の豆の葉を通して病原体を反復して継代したところ、対応するR3耐性遺伝子をコードする植物においてHR防御応答を生じさせる非病原性エフェクター遺伝子(avrPphB)を欠く細菌株が選択された。各継代により、病気を生じさせる細菌コロニーの割合が増したことより、エフェクター遺伝子喪失に対して強い選択圧が働いたことが示唆される。著者らにとって、これらの実験は宿主組織における微生物の病原性の進化を直接観察できるこれまでにない機会となった。
欠失に関するさらなる解析より、avrPphBは他の細菌でみられる組込および接合エレメントおよび病原性アイランドと強い相同性を有する106‐kbゲノムアイランド(PPHGI‐1)の一部であり、病原体をHRに暴露するとアイランド全体が欠失することが明らかになった。驚くことに、このアイランドが喪失しても細菌の増殖能が損なわれることはなく植物に発病させるようだ。IV型線毛や光感受性および化学走性シグナリングに関与する蛋白質をコードする遺伝子を含有するPPHGI‐1が、東および南部アフリカの高地の起源と関連性の高い環境条件において細菌に選択的優位性を付与するのであろう、と著者らは推測している。
doi:10.1038/fake758
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