Highlight
鳥インフルエンザに対するすばやい対策
Nature Reviews Microbiology
2006年3月1日
従来のインフルエンザワクチン作製法は大規模感染時の大量ワクチン生産には適さないことから、リバースジェティクスなど新しい戦略への関心が増している。今回、Andrea Gambottoらは、アデノウイルスベクターを用いた組換えDNAワクチンの構築という代替策を報告した。
2003から2005年の突発発生時にベトナムで単離されたH5N1株(A/Vietnam/1203/2004)由来の赤血球凝集素(HA)の完全長遺伝子配列および2つのHAサブユニットをコードする遺伝子を哺乳類細胞での発現を促進するためにコドン最適化し、弱毒アデノウイルスベクターへクローンニングし哺乳類細胞株で培養した。研究チームはHA配列を入手後36日以内に組換えワクチンを作製することができた。
BALB/cマウスにおいてワクチンに対する体液性および細胞性応答を検討した結果、3種類すべてのワクチンが強い抗体および細胞性免疫応答を生じ、完全長HA配列の場合は相同および異型抗体を産生した。次に、著者らはマウスにおける完全長HAワクチンの有効性を検討した。プライム・ブースト法を用いて免疫し、100LD50単位相当量の親のH5N1ウイルスを感染したところマウスはすべて生き残ったのに対し、アデノウイルスベクターのみを接種した対照グループは感染後6から9日にすべて死に至った。
もっとも重要と考えられるのは、ニワトリでのワクチンの有効性を調べる実験である。3週齢のニワトリに5x1010個のワクチン粒子を鼻腔内あるいは皮下接種し、3週間後に106EID 50単位相当量を鼻腔内に感染した。皮下接種を受けたニワトリはすべて生き残った。鼻腔内接種を受けたニワトリの生存率は50%であり、対照のニワトリはすべて死亡した。
これらのDNAワクチン作製用アデノウイルスベクターに対する免疫が存在することから人への利用は適さないのではないかと懸念されているが、Gambottoらは別のアデノウイルスべクターを利用できるであろうことを示唆している。両方の免疫系を促進できることおよびワクチン産生に費やすスピードの速さを考慮すれば、研究をさらに進める価値があると述べている。本原稿を印刷中、The Lancet誌に別のアデノウイルスを用いたワクチンについての詳細が掲載された。
doi:10.1038/fake759
レビューハイライト
-
5月1日
液体とガラスに隠れた、重要な構造的特徴を明らかにするNature Reviews Physics
-
4月1日
人工次元におけるトポロジカル量子物質Nature Reviews Physics
-
3月25日
キタエフ量子スピン液体のコンセプトと実現Nature Reviews Physics
-
2月28日
次世代粒子加速器:国際リニアコライダー(ILC)Nature Reviews Physics
-
1月18日
磁性トポロジカル絶縁体Nature Reviews Physics