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HIVの中和

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2006年8月1日

Nature Structural & Molecular Biology誌8月号の報告によると、ヒト抗体とHIV-1ウイルス表面に見られるタンパク質との相互作用が明らかにされた。HIV-1が宿主細胞膜に融合する過程を制御するタンパク質の中間型を、D5という抗体が認識する。
宿主細胞への入り口とするために、ウイルスのなかにはまず標的細胞表面に結合し、細胞膜と自身の膜を融合させなければならないものもある。融合過程を制御するタンパク質はHIV-1ではgp41と呼ばれ、膜融合が起こる際に一連の構造変化を起こす。これによって分子の“保存された”聴域があらわになる。この領域は配列が変異しにくいので、抗体にとって理想的な標的となる。別のHIV株集団中であっても抗体には同じものとして“見え”やすいのだ。
Andrea Carfiらはヒト抗体D5がgp41構造中間体を認識すると報告している。これらの分子が結合するしくみを理解すれば、有効なHIV-1中和抗体や治療薬の開発の助けとなるかもしれない。宿主細胞膜と融合するウイルスはほかにもあるので、融合タンパク質中間体を標的とするのは、薬剤治療とワクチン接種に対する有用で適用範囲の広い戦略となる可能性がある。

doi:10.1038/nsmb1127

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