「飛び出し」好調
Nature Reviews Cancer
2006年3月1日
otchなど、保存されていた発生時のシグナル伝達経路がヒト癌で活性化するのは、これまでにも認められているが、動物モデルでこのような経路を活性化させても、腫瘍の形成には不十分であるように思われる。Ferres-Marcoらは現在、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)モデルでは、Notch経路がエピジェネティックサイレンシング経路および腫瘍発生時の細胞周期制御と共同で作用することを報告している。
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生中のDrosophilaの眼は、単純かつ遺伝的に明確であることから、腫瘍が誘導する機序を特定するモデルとしてすぐれている。眼の成長は、そのリガンドであるDeltaおよびSerrateによるNotchの活性化に依存している。Deltaの過剰発現によって作製した「大きな眼」の表現型モデル(図参照)に対しては、遺伝子を無作為にアップレギュレートして、腫瘍増殖が誘導されていないかどうかをみることによって、スクリーニングが実施されている。Ferres-Marcoらは、2つの隣接遺伝子、longitudinals lacking (lola)およびpipsqueak (psq)の過剰発現が、腫瘍形成を引き起こしていることを突き止めた(図参照)。PsqおよびLolaはいずれも、転写抑制パターンを維持するポリコウム遺伝子群のエピジェネティックサイレンサーとして働く。
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は、psqおよびlola は、Notch経路で共活性化させると腫瘍表現型に寄与するのだろうか。Ferres-Marcoらは、両遺伝子に点突然変異を導入し、その発現を阻害した。すると、psq?変異はいずれも腫瘍形成を妨げ、lola?変異はいずれも眼の腫瘍サイズを抑えた。ほとんどの変異はPsqのBTB領域にあったが、BTBタンパク質ファミリーのメンバーは転写抑制因子であり、ポリコウムタンパク質を動員する癌遺伝子を含むことから、Ferres-Marcoらは、psqおよびlolaの調節を解除すると、エピジェネティックサイレンシングによって腫瘍形成に至るのではないかと考えた。エピジェネティック制御ではヒストンH3のメチル化が重要な修飾であるため、Ferres-Marcoらは、eye disc(複眼原基)をヒストンH3メチル化に対する抗体で免疫標識した。腫瘍となったeye discには、H3リシン-4メチル化の消失ないし減少が認められ、Deltaが過剰発現している場合にも、H3メチル化は有意に抑えられていた。
の段階としては、どの遺伝子が異所性サイレンシングを受けているかが検討された。このような遺伝子が、細胞周期のコントロールに関与するものを含んでいる可能性があることから、Ferres-Marcoらは、eye discの変異型および野生型について、腫瘍関連遺伝子12個の転写を調べた。すると、腫瘍ではヒト網膜芽細胞腫の腫瘍抑制遺伝子(RB)のハエ相同遺伝子であるRbf の転写が、強力にダウンレギュレートされていた。Rbf 遺伝子量を半減させると腫瘍増殖が増強され、眼でのRbf の発現を回復させると腫瘍の形成が妨げられた。
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上の結果は、Notch-Delta経路、エピジェネティックサイレンシング経路および腫瘍形成過程での細胞周期制御の三者を結ぶ機序を立証するものである。
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doi:10.1038/nrc1824
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