次々と押し寄せてくる
Nature Reviews Cancer
2006年4月1日
ERBB2/HER2陽性乳癌と診断された女性のためのトラスツズマブ(ハーセプチン)争奪戦は、衰えることなく続いている。
トラスツズマブは、進行性ERBB2陽性腫瘍女性の治療薬として認可されているが、昨年10月に発表された治験3件では、トラスツズマブおよび化学療法薬を12カ月間投与することにより、初期癌患者の再発率が有意に低下したとされている。以上の所見に基づき、英国の女性2名が、トラスツズマブを得ようと地元の医療提供者らを訴えた。このうちの1名は、当該薬物は提供しないとする最初の決定を「死の宣告」と表現した(http://news.bbc.co.uk, 2006年3月3日)。ニュージーランドの女性たちは現在、PHARMAC (病院で扱う医薬品を購入する機関)がトラスツズマブの使用拡大に合意するかどうかを見守っている。しかし、PHARMACのスポークスマンによると、トラスツズマブの安全性には懸念がある (http:// www.stuff.co.nz, 2006年2月19日)。
実際、最初の治験では、確かに心不全の発生率が増大した。しかし、新たに実施された治験では、相乗的化学療法薬を併用した場合、トラスツズマブによるわずか9週間の治療で、心臓合併症リスクが低下した上に、無再発生存率に有意な改善がみられている。Medical College of Wisconsinの腫瘍学者Yee Chung Chengは、「この成績はきわめて良好」と話すも、「さらに決定的な試験が新たに現れない限り、1年間は(治療を)実施」するという (http://www.centredaily.com, 2006年3月6日)。
しかし、嬉々として先走った医療企画会社が少なくとも1社あるとみられる。南アフリカでは、Sam Gallietがトラスツズマブによる12カ月間の治療を受けようと医療保険会社と争っていたが、コストの点から9週間のクールが提示されている。 Gallietは、「これは医師が私に処方した治療法ではない。これで私の命が助かることになるかどうかは疑問」と締めくくっている(http://www.int.iol.co.za, 2006年3月10日)。
doi:10.1038/nrc1870
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