短期クールで十分
Nature Reviews Cancer
2006年4月1日
乳癌の15%〜25%には、ERBB2 (HER2でも知られる)の増幅が起きており、抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン)を化学療法薬と併用すると、生存に改善がみられる。乳癌女性を対象とした第III相臨床試験では、FinHer (Finland Herceptin)試験の治験責任医師らが、短期クール(わずか9週間)におけるトラスツズマブとドセタキセルまたはビノレルビンとの併用が、ERBB2が増幅した患者に有効であることを明らかにしている。
トラスツズマブをパクリタキセルと併用で、または化学療法後に12カ月間投与すると生存に改善がみられるが、1.7%〜4.1%には心不全のリスクがある。そこで治験責任医師らは、別の方法(心毒性のある治療薬の前に、相乗作用があると考えられる化学療法薬とトラスツズマブを併用投与する)を試みた。
腋窩リンパ節陽性乳癌または高リスクのリンパ節陰性乳癌の女性計1,010例を、ドセタキセルまたはビノレルビン投与のいずれかに無作為に割り付けた。このうち、ERBB2の増幅がみられた232例を、さらにトラスツズマブを投与するものとしないものとに無作為割付した。トラスツズマブは、ドセタキセルまたはビノレルビンの第 1クール第1日に第1回目を投与し、その後1週間おきに計9回投与した。どの患者にも、フルオロウラシル、エピルビシンおよびシクロホスファミド (FEC)を投与した。フォローアップ期間の中央値は、35〜37カ月であった。
ドセタキセル+FECを投与した女性は、ビノレルビン+FECを投与した女性と比較して、乳癌の再発および再発なしの死亡が少なかったが、全生存率に有意差はなかった。トラスツズマブ群の患者115例のうち、乳癌が再発したか、または再発なしに死亡したのは12例で、対照群(116例)でこれがみられたのは27例であった。全生存率も、トラスツズマブを投与した患者の方が高い傾向にあった。用量を制限せざるを得ない副作用で最も多かったのは、好中球減少症および好中球減少性感染で、特にドセタキセル治療群にみられたことから、用量が減じられている。心筋梗塞または心不全が4例に認められたが、この中に、トラスツズマブを投与した患者はいなかった。
以上のデータは、規模を拡大した試験で確認する必要があるが、この投与スケジュールでのトラスツズマブ9週間投与には、患者の受診回数の低減、心有害事象数の低減、および乳癌治療の費用効果の増大が期待できる。
doi:10.1038/nrc1875
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