お帰りはあちらへ
Nature Reviews Cancer
2006年4月1日
循環中の骨髄由来前駆細胞は、発達中の腫瘍など、活発にリモデリングする組織に帰巣することが知られている。しかし、そこに関与する機序は未だ不明である。Judy Varnerらは現在、インテグリンα4β1が、腫瘍の新生血管系へこうした前駆細胞が帰巣するのを促し、その細胞も腫瘍増殖に積極的に参加すると報告している。
まず、ヒトCD34+前駆細胞を蛍光色素で標識し、乳腺脂肪体にマウス乳癌スフェロイドを移植したヌードマウスの尾静脈へ注入した。実時間生体内顕微鏡を用いてCD34+細胞を追跡したところ、数分以内に腫瘍血管系を循環し、さらに数分後には腫瘍の中心、周囲の正常な脂肪体または癌が浸潤していないマウス皮膚ではなく、腫瘍周囲の血管で停止していることがわかった。以上の結果は、腫瘍血管からの非特異的漏出を無視したものである。でなければ、中心の腫瘍血管にCD34+細胞が認められてもおかしくない。また、血管に近い腫瘍実質内にもCD34+前駆細胞が認められ、血管から腫瘍組織内へ細胞が遊走することが明らかになった。
インテグリンのような接着タンパク質は、骨髄に造血細胞を帰巣させることが知られている。だとすれば、新生血管系へのCD34+ 細胞誘導にも同じ機序が用いられるのだろうか。循環中のCD34+細胞はいずれも、インテグリンα4β1の発現レベルが著明に高かった。乳癌または肺癌を有するヌードマウスに、蛍光標識したCD34+細胞を抗α4 β1抗体とともに注入したところ、CD34+-細胞停止は認められなかった。ほかのインテグリンの拮抗因子によっても、停止は妨げられなかった。
α4β1が血管形成へのCD34+細胞の関与を促進するかどうかを検討するため、Varnerらは、増強グリーン蛍光タンパク質(EGFP)発現マウスから、血管形成への関与が以前に明らかにされているマウス骨髄由来前駆細胞を単離した。この細胞は、インテグリンα4β1の発現レベルが高かった。EGFP+細胞は腫瘍に帰巣しただけでなく、腫瘍周囲でEGFP+血管を形成した(両特性は抗α4β1 抗体によって阻害された)。さらに、主として腫瘍周囲の腫瘍内皮細胞には、インテグリンα4β1リガンド、血管細胞接着分子およびフィブロネクチンが発現した。
doi:10.1038/nrc1868
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