プロテアソームによる予後
Nature Reviews Cancer
2007年1月1日
ユビキチン-プロテアソーム系成分が過剰発現することが知られている悪性腫瘍の患者は、血中プロテアソーム濃度が高い。ある縦断的研究は、多発性骨髄腫 (MM)患者の循環血中プロテアソーム濃度の測定に予後上の価値があることを明らかにしている。
Orhan Sezerらは、酵素活性を有する中心複合体20Sプロテアソームに基づく酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を実施し、未治療のMM患者141例の血清中プロテアソーム濃度を測定した。健常被験者50例および意義未確定の単クローン性免疫グロブリン血症患者20例からも血清検体を採取した。この両対照群と比較すると、MM患者の循環血中プロテアソーム濃度は有意に高かった。また、くすぶり型よりも活動型のMM患者のほうが、この値が有意に高かった。
Sezerらは、活動型MM患者に第一選択化学療法薬を投与し、その治療が循環血中プロテアソーム濃度にどう影響するかを検討した。治療により完全寛解または部分寛解となった患者の値は有意に低下したが、不応患者の値に変化はみられなかった。しかも、治療により循環血中プロテアソーム濃度が正常となった患者は、治療後も値が高かった不応患者よりも生存期間が有意に長かったことは注目に値する。
Sezerらはまた、血清中プロテアソーム濃度による患者の生存期間の予測可能性を評価した。活動型MM患者の検体を単変量解析に供したところ、循環血中プロテアソーム濃度は、既に確立された指標であるβ2ミクログロブリン、C反応タンパク質、13q14領域の染色体欠失および高用量化学療法と並んで、重要な予後因子であることがわかった。また、多変量解析によっては、循環血中プロテアソーム濃度が最も有力な独立予後因子であることが判明した。
この研究からは、循環血中プロテアソーム濃度がMM患者の疾患進行と相関していること、疾患活動性に感受性を示すこと、生存期間の予測に有用であることが明らかになったが、いずれも説得力がある。ユビキチン-プロテアソーム系を直接阻害する新規クラスの薬物で治療する患者についてさらに研究を重ね、モニタリングを行ってこのマーカーの価値を確立する意味は十分にある。
doi:10.1038/nrc2057
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