頻度も成熟度も高く
Nature Reviews Cancer
2006年12月1日
急性骨髄性白血病(AML)の標的治療法を開発するうえで問題となるのは、白血病幹細胞(LSCs)を同定して治療する必要性である。この細胞は、自己再生能が大きいために、癌を発生させて維持し、治療が失敗すれば、最終的に再生させることができる。SomervailleとClearyは、AMLマウスモデルを用いてLSCコンパートメントの構造を解明し、LSCsの重要な生物学的特性を明らかにしている。
SomervailleとClearyは、造血幹細胞(HSCs) に由来するクローン性の子孫細胞およびMLL-AF9融合癌遺伝子を形質導入した前駆細胞をマウスに移植することによって、白血病を誘導した。さらに、LSCの特徴を有する細胞のサブセットを同定するため、二次被移植マウスに、白血病マウスの脾臓または骨髄のいずれかからin vitroで単離したコロニー形成細胞を移植した。被移植マウスはすべてAMLを発症したことから、クローン原性細胞は、実に白血病細胞の1/4を構成するLSCsと同義であり、AMLにみるLSCsの頻度は、以前に示唆されていたよりもはるかに高いことがわかった。
免疫表現型分析からは、MLL-AF9はAMLクローン内で緩やかな階層構造をとっており、そこでのLSCには、MAC1およびGR1といった成熟骨髄性細胞に特有の抗原のほか、原始マーカーKITが発現することが明らかになった。すなわち、このモデルでAMLを起こすLSCsは、MLL-AF9癌遺伝子がまず狙う幹細胞とも前駆細胞とも明らかに異なっている。このLSCsは、異常なHox関連遺伝子プログラムの活性化により異所性に自己再生する能力のほか、微小環境からのシグナルに対する感受性の増強によって帰巣後に生き延びて増殖する能力を獲得した下流の骨髄系細胞である。以上のことから、治療戦略の成功には、幹細胞様表現型を獲得した白血病クローンの中でも、はるかに多数で成熟度の高いものを標的とする必要があると考えられる。
doi:10.1038/nrc2034
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