小さくても影響力大
Nature Reviews Cancer
2006年5月1日
マイクロRNA (miRNA)は小さな非コードRNA遺伝子産物であり、その主な役割は、mRNAの翻訳および分解を調節することにある。ほとんどのmiRNAの生物学的機能は完全にはわかっていないが、miRNAはこれまでヒト腫瘍形成に関連すると見なされてきた。Curtis Harrisらは現在、肺癌のmiRNA発現プロフィールに独特なものがあり、これが正常な肺組織とは異なること、患者の生存と相関していることを明らかにしている。
原発性肺癌と対応する正常肺組織104対のmiRNA発現プロフィールを分析したところ、両グループ間で差がみられたmiRNAが43個あった。多変量の並べ換え検定からは、これらのmiRNAが偶然特定される可能性はゼロであることがわかっている。これらのmiRNAには、肺癌で変化していることが多い脆弱部位(転座、欠失および増幅が優先的に起こる部位)に関わるものがいくつかあった。6個のmiRNAは非小細胞肺癌(NSCLC)の腺癌にも扁平上皮癌にも認められ、別の6個はNSCLCの両組織型での発現が異なっていた。成熟miRNAの液相ハイブリダイゼーション検出および前駆体miRNAの実時間RT-PCRにより、肺癌組織では正常な肺組織と比べてhas-mir-21 およびhas-mir-205 がアップレギュレートされ、has-mir-126* がダウンレギュレートされているというマイクロアレイ分析の所見の正当性が裏付けられた。
では、miRNA発現プロフィールは、肺癌患者の予後と相関しているのだろうか。特異的miRNA 5種類の発現レベルが高く、has-let-7a-2 など、ほかのmiRNA 3種類のうち1種類の発現レベルが低い患者は、有意に予後が不良であった。また、miRNA 3種類(has-mir-155、 has-mir-17.3p、 has-mir-20)は、I期腺癌患者41例の生存率と関係があった。Kaplan-Meier生存分析からは、has-mir-155の発現レベルが高いこと、has-let-7a-2の発現レベルが低いこと、病期が特に重大な予後因子であることが明らかになった。上記の発現シグネチャデータは、独立した腺癌患者群を対象にした実時間RT-PCRによっても確認されている。
この試験で確認されたmiRNAの一部はすでに、ほかの癌にも関与すると考えられ、癌遺伝子の調節とも関連付けられている(miR-155はMYCの共同因子として関与し、let-7ファミリーは、Rasの負の調節を行う)。上記miRNAの標的を確認し、肺癌形成におけるその機能を解明するには、さらに試験を重ねる必要がある。 .
doi:10.1038/nrc1896
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