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Nature Reviews Cancer

2006年5月1日

MYCは、マウスモデルに過剰発現すると発癌性を示すことで知られているが、具体的にはMYCがどれぐらいあれば、腫瘍が形成されるのだろうか。

Suzanne Coryらはこの問いに答えるべく、マウスVav 遺伝子の調節配列の制御下でさまざまなレベルのMYCを発現する一連のトランスジェニックマウスを作製した。この遺伝子は、初期の前駆細胞または成熟した子孫細胞にかかわらず、多様な種類の造血細胞でMYCの発現を指示する。

Coryらは、腫瘍発生率がMYCの発現レベルと相関していることを突き止めた。MYCの発現レベルが最も高いMYC17マウスでは、生存期間が8週間(中央値)であったのに対し、MYCの発現レベルが最も低いMYC10マウスおよびMYC12マウスでは、それぞれ41週間および58週間であった。

悪性腫瘍の性質も発現レベルに依存していた。MYC17マウスには播種性T細胞リンパ腫が発生したが、MYC12マウスの全ておよびMYC10 マウスのほとんどには、単球-マクロファージ系統の細胞から成る組織球肉腫が発生したのである。この肉腫は、進行して悪性組織球増加症となる稀なヒト組織球肉腫と類似しており、興味深い。MYCがこの疾患に関与しているかどうかは不明であるが、Coryらは、このような分析に実施の価値があるのではないかとしている。

MYC10マウスの一部は、MYC17マウスと同じく早期発症T細胞リンパ腫を生じ、T細胞の形質転換には閾値を超えるMYCが必要であることが明らかになった。Coryらはこのことを調べるため、ホモ接合型のMYC10マウスを作製した。このマウスにはいずれもT細胞リンパ腫が発生し、MYC発現レベルが2倍になっただけで腫瘍の種類が変わることがわかる。

Coryらはこのほか、ヘテロ接合型のMYC10マウスとトランスジェニックBCL2マウスを交配すると、T細胞リンパ腫の発生率が有意に高くなることを明らかにし、T細胞の形質転換には、高レベルのMYC発現に加えて抗アポトーシス変異も必要である可能性を示した。

Coryらは、単球-マクロファージ系統の細胞は、MYC発現レベルが少し高くなっただけで極めて形質転換を受けやすくなるが、MYCを介するT細胞の形質転換にはさらに高い閾値が必要であるとの結論を導いている。上記モデルの検討を重ねれば、このように多様な種類の細胞の形質転換に必要な MYC標的遺伝子が特定される可能性がある。

doi:10.1038/nrc1897

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