早々に楽観
Nature Reviews Cancer
2006年5月1日
ハーセプチン抵抗性乳癌の新薬であるジトシル酸ラパチニブに関する治験の有益性が明らかにされたことから、グラクソ・スミスクライン(GSK)社は早々に試験を切り上げ、規制機関の承認を得るための手続きを進めている。
ハーセプチンに対する反応が見られるのは、乳癌5例中1例のみであることから、別の療法が緊急に必要とされている。この第III相試験では、ハーセプチン抵抗性の進行乳癌女性321例に対し、ジトシル酸ラパチニブを既存の化学療法薬であるカペシタビンと併用で投与している。GSK社によると、治療を受けた女性で癌の増殖に50%の遅延が認められたため、同社は独立データモニタリング委員会と協議の上、患者の新規補充を取りやめた。GSK社のPaolo Paoletti氏は、「Tykerb [ジトシル酸ラパチニブ]を化学療法薬と併用で経口摂取すると、きわめて高い有益性が得られることを示唆するデータは、非常に心強い」と話す (http://www.timesonline.co.uk, 2006年4月4日)。
これは、この薬物が予想よりはるかに早く市販されるようになることを意味する。Paoletti氏はまた、「これを含めた諸々データに基づき、2006年後半には欧米で[規制機関の承認を受けるための]書類を提出する予定である」と話している(http://www.washingtonpost.com, 2006年4月10日)。
ジトシル酸ラパチニブは、EGFRもERBB2も標的にする低分子の二重キナーゼ阻害因子である。このため、肺癌に用いることも可能で、GSK社はこの可能性を積極的に追求している。また、従来の化学療法薬とは異なり、経口投与で有効な薬物であるという利点もある。
英国Breakthrough Breast CancerのSarah Rawlings氏は、製薬業界の部外者という立場から、「市販の乳[癌]治療薬の蓄えが増大している中で、これは別の選択肢となりうる。利点と副作用についてさらに詳しく知りたい」と慎重な楽観論を表明している(http://www.eveningnews.co.uk, 2006年4月4日)。
doi:10.1038/nrc1904
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