顕著な低下
Nature Reviews Cancer
2006年1月1日
タモキシフェンは乳癌の治療に用いられているが、その使用によって子宮体癌の発現率が上昇する。Wuらは、今回、タモキシフェンがこのような発癌作用をもたらすエストロゲン経路を特定した。
タモキシフェンとエストロゲンはともにエストロゲン受容体と結合してそれぞれの作用を引き起こすことから、著者らはマイクロアレイを用いて、類内膜癌標本において遺伝子発現に及ぼすタモキシフェンとエストロゲンの作用を比較した。両2つの分子によって調節された遺伝子セットには重複があったが、それぞれの遺伝子セットの3分の2は独自であった。このことは、エストロゲンとタモキシフェンが異なる経路を介して作用していることを意味している。
次に、著者らは両分子によって調節される遺伝子に注目し、アップレギュレートされたひとつの遺伝子paired box gene 2(PAX2)が類内膜腫瘍において過剰発現された場合、細胞増殖を有意に亢進することを認めた。さらに、PAX2のサイレンシングは、エストロゲンまたはタモキシフェンで刺激していた腫瘍の細胞増殖を抑制した。
これらの結果から、PAX2はタモキシフェンで刺激された発癌を仲介することが示唆された。そこで、著者らは癌腫におけるPAX2の発現パターンに注目した。その結果、PAX2の発現はエストロゲン受容体-α(ERα)の発現と相関し、またERαはPAX2の上流調節領域と結合することがわかった。
さらに、癌腫標本においてPAX2プロモータが低メチル化されているのに対し、正常な子宮内膜組織では高メチル化されていることが判明した。このようなメチル化の低下がタモキシフェン結合ERαによるPAX2発現の活性化に対する理由であると著者らは示唆している。上記した低メチル化がどのようにして起こるかについてはさらなる検討が必要であるが、PAX2の役割が特定されたことは、新たな薬剤ターゲットの可能性を提供している。
doi:10.1038/nrc1794
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